東京商工会議所はこのほど、事業承継に関する実態アンケート集計結果を取りまとめ、報告書を公開した。事業環境の変化と事業承継への影響については、コロナ禍前と比較し、直前決算期の売上高の減少幅が大きいほど、「事業承継を後まわしにした」もしくは「事業承継を断念した」割合が増加。事業承継の効果については、最近、事業承継を実施した企業ほど新しい取り組みを行い、また、利益では黒字の割合が高い傾向となった。
中小企業の事業承継の現状を見ると、後継者(候補含む)がいる企業は約5割で、「後継者を決めていないが、事業は継続したい」企業は約3割。後継者との関係では、親族内が72.6%と高い割合を占めている。一方で、従業員(親族外)は・4%。後継者が従業員と回答した割合は3年前の調査より約8ポイント上昇している。
事業承継に要する期間については、後継者候補を選定してから、後継者を決定するまで3年以上要した企業は約4割。後継者を決定してから事業承継完了まで3年以上必要な企業は約5割に上った。一方で、事業承継は時間がかかるものの、事業承継計画を作成している企業は2割にも満たない結果となっている。
後継者(候補含む)がいる企業の事業承継の課題は「後継者への株式の移転」(43.4%)が最多。次いで、「後継者教育」(32.9%)、「従業員との関係構築」(32.7%)の順で多くなっている。また、自社の株価評価(相続税評価額) を過去に実施したことがない割合は約3割で、後継者へ株式の移転を行う際の障害では、資金面で障害を抱える企業が多い結果となった。
事業承継税制について、後継者(候補含む)がいる企業において、事業承継税制を「利用・検討したことがある」割合は26.4%。「事業承継税制の内容を知っているが、検討していない」は34.0%、「事業承継税制を知らない」は39.6%だった。「事業承継税制の内容を知っているが、検討していない」と回答した企業の制度上の障壁は、「適用期限(2027年12月末)までに事業承継を完了することができない」23.9%、「提出期限(2024年3月末)までに特例承継計画を提出できない」(20.3%)との回答が多く、自社の障壁では、「後継者候補はいるが、経営者としての人材育成が終わっていない」が32.9%で最多。「現代表者が現役で働けるため、今すぐの事業承継は考えられない」(22.5%)との回答もあった。また、「事業承継税制を知らない」企業では、「後継者への株式の移転」よりも「借入金・債務保証の引継ぎ」に課題を抱えている企業が多かった。
事業継続に向けたM&A(譲渡)については、「後継者を決めていないが、事業は継続したい」「自分の代で廃業する予定」と回答した企業の約9割はM&Aを検討したことがない。M&Aを検討しない理由としては「M&Aに対して良いイメージを持っていない」(26.5%)、「自社がM&Aの対象になるとは思えない」(24.6%)などの声が多かった。
調査期間は、2023年7月14日~8月10日で調査対象は、主に東京23区内の中小企業1万社。回答数は1661社で回答率は16.6%。
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