日本商工会議所は3月22日、都内で第138回通常会員総会をハイブリッド形式で開催し、各地商工会議所から会頭・副会頭ら約1000人が出席した。総会の冒頭にあいさつした小林健会頭は、能登半島地震からの復旧・復興に向けた息の長い支援を呼び掛けるとともに、「デフレからの脱却、成長と分配の好循環」「人と企業が輝く地域の創造」などに向け、商工会議所自身が自己変革し、取り組みを強化することなどを呼び掛けた。
小林会頭は、あいさつの冒頭、1月に発生した能登半島地震後、いち早く取りまとめた緊急要望、経営指導員の応援出張、義援金、青年部による支援物資配布など、全国の商工会議所の迅速な支援に謝意を表明。「一日も早い復旧・復興に向け、政府への追加要望を含め力強い支援活動を、全国の商工会議所の総力を挙げて、息長く継続していく」と述べた。
デフレからの脱却、成長と分配の好循環に向けては、政府に対して、大胆な経済財政政策の実行を要望するとともに、「われわれ民間は、政府の施策を活用しつつ、果敢に自己変革に挑戦する必要がある」と指摘。全国の中小企業に向けては、「商工会議所などと連携して、政府の施策を十分に活用し、自社の自己変革に挑戦してほしい」と期待を示した。
また、中小企業の持続的な賃上げに向けた取引価格の適正化については、「4万2千社を超えた『パートナーシップ構築宣言』の拡大・実効性向上に向けた取り組みなどにより進捗(しんちょく)しているものの、特に労務費は価格転嫁が思うように進んでいない」と指摘。商工会議所は「中小企業経営者に、政府の施策や転嫁指針を活用して、勇気を持って価格交渉に挑むよう働きかけることが重要」と述べた。
大企業に対しては、「社会的責務として、経営者が先頭に立ち、調達現場の価格交渉をリードしてほしい」と強く求めるとともに、中小企業に対しては、「臆することなく価格交渉を申し入れるとともに、より規模の小さな事業者との価格交渉に応じることが求められる」との考えを表明。「良いもの・サービスには値が付く。これまでの商習慣から脱却し、勇気を持って値上げに取り組み、デフレマインドを払拭しよう」と呼び掛けた。
「人と企業が輝く地域の創造」に向けては、「稼ぐ産業」の育成、多様な人材の活躍、観光振興、農林水産業の輸出産業化、地域イノベーション、公民連携による中心市街地再生、兼業・副業人材の活用などに加え、来年4月に開幕する「大阪・関西万博」の成功の重要性を強調。政府に対しては、持続可能な地域づくりの基盤整備とともに、東日本大震災からの復興・創生と福島再生の推進、日本産水産物の輸入規制措置の早期撤廃などを求めた。
商工会議所自身の組織・財政基盤の強化も訴えた。「地域総合経済団体である商工会議所自身が自己変革し、積極果敢に事業を展開することが求められる」と強調。「希望が持てる日本経済を次世代に引き継ぐために取り組みを強化する必要がある」と述べた。
来賓を代表してあいさつした岸田文雄首相は、政府として、能登半島地震からの復旧・復興に全力で取り組む考えを示すともに、成長型経済への移行に向け、「今年の春闘では昨年を上回る力強い賃上げの流れができつつある。この流れが広がるためには、中小企業、小規模事業者における賃上げが何よりも重要だ」と述べ、商工会議所への協力を要請。「政府としては、政策を総動員して、賃上げを後押しする」と強調した。
総会議事では、「2024年度事業計画(案)」「同収支予算(案)」の議案の審議を行い、異議なく承認した。日本商工会議所表彰では、商工会議所に功労のあった役員・議員・職員452人を表彰するとともに、「組織強化表彰」では、組織率向上・小松(石川県)など18商工会議所、会員数増加・袋井(静岡県)など18商工会議所、高組織率・原町(福島県)など19商工会議所、また、財政基盤強化に業績があった青森など18商工会議所をそれぞれ表彰。「事業活動表彰」ではさいたま(埼玉県)、岡崎、一宮、豊川(以上愛知県)、福井、泉大津(大阪府)、福山(広島県)、久留米(福岡県)の8商工会議所を表彰した。
最新号を紙面で読める!