政府は4月17日、第26回「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)を開催し、官民連携によるコンテンツ産業の活性化戦略などについて議論した。会議に出席した日本商工会議所の小林健会頭は、「グローバルベースでマーケットを獲得し得る魅力を備えたコンテンツを、日本の成長のけん引の担い手となる産業として位置付け、競争力を高める支援を行っていく方針に異論ない」と強調。岸田首相は、「官は環境整備を図るが、民のコンテンツ制作には口を出さないという、官民の健全なパートナーシップを築くことを目指して、この春の実行計画の改訂に向けて、政府を挙げて官民連携によるコンテンツ産業活性化戦略を策定していく」と述べた。
小林会頭は、クリエーターの育成、適正な契約・取引関係による収益配分、適切な労働環境、知的財産の帰属・侵害抑止などについて、「産業として成長を続けるための基盤」と指摘。「産業全体の実態を把握し、課題の抽出を踏まえた取引慣行、制作・労働環境の整備を図ることが重要」と述べ、クリエーターを中心に据えたグローバルスタンダード化により、日本を世界のヒト・モノ・カネが集まるコンテンツ産業のハブに育てる意欲を持って取り組むよう求めた。
有力コンテンツの映画化などにおけるロケ地誘致については、「各国政府による制作者への財政支援が盛んに行われ、苛烈(しれつ)な競争下にあることから、国内誘致に向けた政府の取り組みを強化すべき」との意見を述べた。また、映画・アニメのゆかりの地訪問やフィルムコミッションによるロケ地誘致など、各地の人流・消費創出につながる活動を積極的に後押しするよう求めた。
岸田首相は、「制作現場の労働環境や賃金の支払いといった側面で、クリエーターが安心して持続的に働くことができる環境が未整備」との認識を表明。「公正取引委員会の協力の下、契約を適正化するため、実態調査を行い、結果を踏まえて、優越的地位の乱用を防止し、それに反する行為は独占禁止法に抵触する恐れがあることを示す指針の作成を図る」と述べ、クリエーター個人の創造性が最大限発揮される環境を整備するととともに、官民の取り組みにより、制作サイドに収益を還元するビジネスモデルを構築していく意向を示した。
また、海外展開を促進するため、国際見本市や国際映画祭における出展機能、海外への進出に際しての制作会社に対するビジネス展開の支援の抜本強化、若い人に対する留学支援や国内での学びの場の整備なども実施していく考えを表明した。
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