日本商工会議所は4月18日、「地域経済の好循環を支える中小企業の持続的な成長に向けた意見」を取りまとめ、公表した。同日、日商の立野純三中小企業委員長が中小企業庁の須藤治長官に意見書を手交。地域経済の好循環創出の原動力である中小企業の成長が、日本全体の成長に直結することから、その挑戦を後押しする環境整備と支援の実現を強く求めた。
意見書では、わが国経済は停滞から成長への転換局面にあり、デフレ克服の好機を迎え景況は改善傾向にあるが、全国の中小企業に波及するには相当の時間がかかると指摘。こうした中、中小企業は自己変革に挑戦し、円安に伴う物価高などのコスト増や、人手不足、賃上げといった経営課題に打ち勝ち、事業継続・拡大していくことが必要としている。
また、3大都市圏を除く地方部では雇用の約9割を中小企業が占めることから、地域における重要性を示した上で、中小企業の特性を踏まえた政策展開が必要と強調。成長のはしごを登っていく成長志向型の「地域牽引(けんいん)企業」に対する自己変革への挑戦を通じた付加価値拡大を後押しする大胆な税財政支援と、地域のコミュニティーを支え、エッセンシャルな役割を担う「地域貢献企業」が誇りを持ち、前向きに経営に取組みたいと思える環境整備を求めるとともに、挑戦を支える三つの対策を提示している。
まず、価格転嫁など取引適正化に向けた「公正なビジネス環境整備」に向け、政府の監視機能のさらなる強化や、パートナーシップ構築宣言の推進、中小企業の価格交渉力向上、BtoCにおける適正な価格転嫁のための、国民の理解促進などを要望。加えて、民間の挑戦を後押しするため、将来の成長期待を高める政策運営や原発再稼働などを求めている。
また、人手不足など五つの課題克服への「自己変革による挑戦支援」を要望するとともに、必要な対応を提示。①賃上げや成長投資の原資確保に対応する、新たな付加価値の創造と拡大への挑戦、②深刻な人手不足に対応する、デジタル活用による生産性向上の徹底、③人材確保・定着に向けた賃上げや就労環境整備、④コロナ禍などの過剰債務に対する収益力改善に資する資金繰り、⑤地域における事業創出と所得拡大に向けた、地域をけん引する中堅企業への支援を求めている。
さらに、地域の活力強化と合わせた「小規模事業者の自立的な経営支援」を要望。地域を支える小規模事業者の重要性を示した上で、「個社支援」だけでは限界があるため、地域の稼ぐ力を強化する「面的支援」と合わせた支援が重要と指摘している。具体的には、商工会議所などの経営支援体制の拡充と、経営者に多様な選択肢を与えるための早期相談・支援体制の強化などを求めている。
なお、日商は、意見書の内容が国の中小企業・地域活性化施策に反映されるよう、政府・政党などに強く働きかけていく。
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