「1%経済圏域」。私たちが商工業を営む山陰エリアを表す言葉です。GDP、総人口、いずれの項目で比較しても、おおむね1%圏域であるといえます。島根県安来市は、そのど真ん中、島根県と鳥取県の県境に位置しています。人口3万6千人余りではありますが、鉄鋼業クラスターが形成されており、「鉄のまち」として周辺自治体と関連の深い経済圏を形成しています。
この地における鉄の歴史は古く、日本古代からの「たたら製鉄」と大いに関係しています。11世紀以降、資源に恵まれた中国山地を背景に、山陰地方で盛んに鉄の生産が行われました。安来港は鉄の積出港として栄え、安来節や料亭、問屋街跡など、今でもその面影を感じ取れます。また、当地には足立美術館や鷺(さぎ)の湯温泉、月山富田城などの観光資源もあり、これらと「鉄」や「歴史」をつなげ、安来だからこその物語をつくっていくことも、これからの産業振興に必要だと考えています。
歴史はあれども、「1%経済圏域」であることは事実です。「人口減少」と「都市への人口集中」には根本的な打開策は乏しく、経済も緩やかに衰退へ向かうことが容易に想像できます。しかし、だからこそ、今がチャンスだと捉えています。 日本の地方が遠くない未来に直面する課題が顕在化している圏域だからこそ、いち早く解決策を模索することができる。「課題先進圏域から課題“解決”先進圏域へ」。このことを常に念頭に置いています。そして、私たちのチャレンジの成果を日本全国にご紹介し、地方創生の一助にしていきたい。
特徴的な取り組みとして、「中海・宍道湖・大山圏域」での活動があります。島根県東部・鳥取県西部という県をまたいだ経済圏域として、行政と商工会議所が一体となり、インフラ整備、ものづくり、観光(インバウンド)、消費拡大などを推進しています。持続可能な地域経済のために、必ず実績を残していきます。余談ですが、お隣の松江商工会議所の田部長右衛門会頭は、私の同級生(1979年生まれ)かつ親友で、連携しやすいという事情もあります。
最後に、当社は社会インフラを担う企業であり、持続可能な地域経済と密接に関わっています。従って、課題解決先進圏域の一助になるべく、昨年度よりCVC(ベンチャー投資)事業を開始しています。技術力のあるスタートアップ企業への出資を通じて、当地“発”のサービスを構築している最中です。
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