日本・東京商工会議所は4月18日、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会と4団体連名で、「最低賃金に関する要望」を取りまとめ、公表した。日商の小山田隆労働委員長は同日、厚生労働省の宮﨑政久厚生労働副大臣に要望書を手交し、法に定める3要素(生計費、賃金、企業の支払い能力)に基づく明確な根拠による審議決定、最低賃金引き上げが中小企業・小規模事業者の経営や地域の雇用に与える影響の注視、中小企業が自発的・持続的に賃上げできる環境整備などを強く求めた。
小山田委員長は宮﨑副大臣に対して、「最低賃金制度については、生計費(物価)と賃金が上昇局面に入る中で、ある程度の引き上げは必要と考えるが、労働者の生活を保障するセーフティーネットとして、赤字企業も含め強制力を持って適用されることから、法の主旨にのっとった審議決定が求められる」と強調。「2022年度の審議以降、公労使が3要素に関するデータを基に審議を重ね、各種統計を参照する形で目安額決定の根拠が明確に示されるなど、中央ではプロセスの適正化が一定程度図られてきた」と一定の評価を示す一方で、「こうした取り組みが継続され、中央はもとより、地方においてもデータによる明確な根拠に基づく納得感のある審議決定が行われることを強く求める」と要請した。
さらに、地方最低賃金審議会においては、「目安額ありき」「引き上げありき」で、地域の経済実態を十分踏まえた議論がされていないとの声が聞かれることから、政府に対して各都道府県の労働局を通じ、地方最低賃金審議会におけるデータに基づく納得感のある審議決定を徹底するとともに、参照すべき地域別の統計データの例示・提供などによる支援を要望した。
宮﨑副大臣は、「最低賃金の審議に当たっては、3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて審議を進めることができるよう、厚生労働省としても真摯(しんし)に対応してまいりたい。また、最低賃金の引き上げに当たっては、中小企業が賃上げしやすい環境整備が重要と考えている。要望の点も含め、引き続き、賃上げしやすい環境整備に一層取り組んでまいりたい」と述べた。
要望書では具体的な要望項目として、①中央・地方の最低賃金審議においては、法定3要素に関するデータに基づく明確な根拠の下、納得感のある審議決定、②最低賃金引き上げが中小企業・小規模事業者の経営や地域の雇用に与える影響に注視、③中小企業・小規模事業者が自発的・持続的に賃上げできる環境整備の推進、④中小企業・小規模事業者の人手不足につながる「年収の壁」問題の解消、⑤改定後の最低賃金に対応するための十分な準備期間の確保、⑥産業別に定める特定最低賃金制度の適切な運用の6点を要望している。
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