政府は5月13日、第11回「GX実行会議」(議長・岸田文雄首相)を開催し、日本のグリーントランスフォーメーション(GX)の加速に向けた取り組みについて議論した。岸田首相は、2040年を見据えた脱炭素への取り組みを示す「GX国家戦略」を策定する考えを示した。会議に出席した日本商工会議所の小林健会頭は、「ここまでのGX推進に向けた政策の進展を評価したい。新たに『GX国家戦略』を策定することは時宜を得たもの」と述べ、GX国家戦略の策定に期待を寄せた。
会議では、GX国家戦略の策定向けた論点として、エネルギーや産業立地などが提示された。小林会頭はエネルギーについては、「エネルギー消費者としての中小企業の立場からは、原発再稼働と東日本のグリッド整備が火急の施策。エネルギー安定供給確保はGX推進の大前提であり、原発政策の推進は不可欠」として、再稼働が遅れている東日本地域を中心に、引き続き政府が全面に立った取り組みを要望した。また、再生可能エネルギーの供給拠点が現在、北海道と九州に集中し、適地も限られることから、電源立地の偏在と自然状況による発電量の変動をカバーする広域送電網と蓄電設備の整備に速やかに着手するよう求めた。さらに、「移行期の電力安定供給を支える化石燃料・設備の維持・確保は必須」と指摘。産ガス国などとの連携によるLNGの安定確保を戦略に盛り込むよう要請した。
産業立地については、「脱炭素電源の設置が立地地域の産業振興につながることが重要」と強調。半導体関連やデータセンターなど、需要家企業の誘致や地元中小企業の参画を促す取り組みが必要と述べた。
また、中小企業のGX推進については、中小企業はエネルギー価格や原材料費、人件費など、コスト負担の増大に直面している中、脱炭素の貢献というだけで追加のコスト負担を積極的に受け入れる状況にないため、「中小企業がメリットを感じられるよう、省エネによるコスト削減が結果として排出量削減につながる形が望ましい」と述べ、引き続きの政府の支援を求めた。
岸田首相は、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画を年度内にも改定することに触れつつ、「政治・経済・社会・技術、あらゆる面で、世界が安定期から激動期へと入りつつある中で、単一の前提ありきでエネルギーミックスの数字を示す手法には限界がある。前提自体を自らが有利な方向にどう変えていくか、そして、前提の急変に即応する柔構造をどう備えていくかが、より一層重要になっている」と指摘。「産業構造、産業立地、技術革新、消費者行動といった経済社会全体の大変革と脱炭素への取り組みを一体的に検討し、2040年を見据えたGX国家戦略として統合していく中で、官民が共有する脱炭素への現実的なルートを示すものにしたい」との考えを表明した。
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