商工組合中央金庫(商工中金)はこのほど、「『物流の2024年問題』に対する中小企業の動向」に関する調査結果を公表した。「物流の2024年問題」に対する対策についてはトラック運送事業者の約8割が着手しているのに対し荷主は約6割。3割は未着手であるなど、荷主の危機感の醸成がまだ進んでいない可能性があらわになった。
同調査は、四半期に一度実施している「景況調査」の「2024年2月調査 トピックス分(毎回内容を変えている質問項目)」を取りまとめたもの。回答期間は2月16日~3月4日、対象は商工中金の取引先中小・中堅企業3764社で、2066社が回答した(回答率54.9%)。
調査結果をトラック運送事業者と荷主に分けて見ると、「物流の2024年問題」に対するリスクの認識・対策状況について、トラック運送事業者は「対策済み」「一部済み」を合わせて約8割が対策に着手している一方、荷主は約6割、「未着手」も約3割と対策状況に明確な差が見られた。
「物流の2024年問題」によって受けることが予想される影響については、荷主のほとんどが「物流コスト上昇(93.8%)」を懸念しているのに対し、トラック運送事業者は「人件費上昇による収益悪化(57.9%)」が「運賃引き上げに伴う収益改善(26.1%)」を大きく上回った。コンプライアンスリスクの懸念についても、荷主は5.5%、トラック運送事業者は26.6%となり、荷主の危機感の醸成がまだ進んでいない可能性があると分析している。
「物流の2024年問題」に対する取り組みの内容については、トラック運送事業者は「協議の実施」「運賃引き上げ」「ドライバーの給与等改善」などに既に着手、今後検討する取り組みでは「ドライバーの給与等改善」に加え「荷待ち・荷役料金の収受」「ドライバーの働き方改善」などが上位に挙げられている。一方、荷主は、「協議の実施」「運賃引き上げ」には着手しているものの、今後も検討する項目の上位となっている。また、今後検討することとしては、ほかに「共同配送の推進」「モーダルシフト(トラック輸送の鉄道や船舶利用への転換)など」「協力事業者の拡大」など既存の運送事業者に依存しない方法が挙げられている。
商工中金では、荷主事業者の対策の遅れやドライバーの長時間労働の要因となっている「荷役・荷待ち」の改善などに対する意識が低いことから、この点に対する意識向上を期待するとともに、運送、荷主事業者双方で従業員の働き方改革、生産性向上に向けた対応、特にDX・ITの活用などの取り組みが求められるとまとめている。
詳細は、https://www.shokochukin.co.jp/assets/pdf/nr_240508_01.pdfを参照。
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