政府は6月7日、第28回「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)を開催し、新しい資本主義の実現に向けた実行計画の改訂案について議論した。改訂案では、「わが国のデフレ脱却への道は、いまだ道半ば」と強調し、「物価上昇を上回る賃上げを『定着』させるためには、中小・小規模企業の賃上げの『定着』が必要であり、このため、中小・小規模企業の『稼ぐ力』の向上に全力を挙げる」と明記。この達成に向けて、労務費などの価格転嫁の推進、省力化投資の加速的推進などの支援に取り組むとしている。
会議に出席した日本商工会議所の小林健会頭は、「今回の改訂により、成長型経済への転換を果たしていくための進むべき方向性がより明らかになった。その原動力となるのは、生産性向上・付加価値創出に裏付けされたモデレートな物価上昇と、構造的な賃金上昇が、社会の隅々に至るまで浸透すること」と指摘。「賃上げを継続していくためには、パートナーシップ構築宣言の実効性確保をはじめ、取引適正化による価格転嫁を商習慣として定着させることが不可欠。改めて『社会の意識を変える』ことに官民一体となって取り組みたい」と意欲を示した。
中小企業の生産性向上や付加価値創出については、「人とデジタルへの投資にかかっている。経営者が自ら自己変革にチャレンジするとともに、社員のリ・スキリングや省力化・省人化を決断することが欠かせない」と指摘。引き続きの政府の強力な後押しを要望した。
また、政府が進めるGX、DXなどの成長戦略が中小企業における連続的なイノベーションの創出につながる環境づくりや知的財産の積極的な活用・保護強化も要請した。さらに「商業インフラなど、地域の暮らしを支える基盤的な事業への目配りも必要。経済合理性や効率性だけでは測れない人々の思いにも寄り添いながら、円滑な事業承継や経営の見直し支援などに取り組んでもらいたい」とコメントした。
岸田首相は、「新たな官民連携、社会的課題解決と経済成長の二兎(にと)の実現を引き続き掲げ、物価高を乗り越えるために、今年、物価上昇を上回る所得を実現し、来年以降に、物価上昇を上回る賃上げを定着させるべく、政府を挙げて取り組みを強化していく」と強調。中小・小規模企業の賃上げに向けて、「労務費の価格転嫁の徹底を図るとともに、下請代金法について、改正の検討も含め、厳正な対処を行う。また、来年の春季労使交渉に向けて、地方版政労使会議の定着を図る」との考えを表明した。
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