Q 当社では、補助業務に当たる従業員を有期雇用の契約社員として雇用しています。補助業務についても、時には時間外労働の必要が生じますが、契約社員に対して時間外労働を命じることはできるのでしょうか。なお、契約社員の所定労働時間は、拘束8時間、休憩1時間で、実働は7時間、週休2日制です。
A 契約社員に対しても、就業規則および個別の雇用契約で時間外労働の義務を定めることによって、時間外労働を命じることができます。ただし、法外時間外労働を命じるためには36協定の締結が必要です。36協定は期間を1年以内と定めなければなりませんので、最低でも年に1回は労働基準監督署に届け出ることになります。
契約社員の時間外労働
「契約社員」と称する従業員は、雇用期間を定めるほか、契約社員に適用される就業規則および個別の雇用契約に始業時刻と終業時刻を明示して、所定労働時間を定めているのが通常です。
所定時間外労働については、契約社員だから命じることができないというわけではありません。就業規則および個別の雇用契約において時間外労働を命じることがある旨が明示され、時間外労働もあることが労働契約の内容となっている場合には、契約社員に対しても時間外労働を命じることができます。
他方、労働契約の内容が、時間外労働を命じないものとなっている場合には、時間外労働を命じることはできません。
法内時間外労働と法外時間外労働
ご質問の契約社員の場合、1日の所定労働時間は7時間ですので、時間外労働を命じることがある旨が労働契約の内容になっているときは、まず、所定労働時間終了後、1日8時間の法定労働時間(労働基準法32条)に達するまでの時間について、時間外労働を命じることができます。このような時間外労働を「法内時間外労働」と呼ぶことがあります。
さらに、1日8時間を超える時間外労働、すなわち、法外時間外労働を命じるためには、契約社員も含まれている内容の36協定を締結し、これを労働基準監督署に届け出ておくことが必要です(労働基準法36条)。
休日労働についても、所定休日の場合は、休日出勤を命じることがある旨が労働契約の内容になっていれば、休日出勤を命じることができます。
法定休日にも出勤を命じる場合は、やはり36協定を締結して労働基準監督署に届け出ておくことが必要です。
36協定の締結の仕方
契約社員などについて36協定を締結する場合、その相手方は当該事業場で雇用されている契約社員を含む全従業員の過半数を代表する従業員、または過半数の従業員を代表する労働組合であり、契約社員ではありません。また、もともと契約社員も含まれている内容の36協定が締結されている場合には、新たに36協定を締結することは不要です。
ただし、36協定は、そこで定めた時間外・休日労働をさせる事由、業務の種類、労働者数、法外時間外労働を命じることができる時間数、休日労働の日数などの範囲内でのみ有効となるものです。よって、契約社員が急増した場合など、従来の36協定の範囲を超えることとなったときは、別途36協定を締結することが必要となります。
なお、36協定は期間を1年以内と定めることが必要で、最低でも年に1回は労働基準監督署に届け出なければなりません。
時間外労働の上限について
法外時間外労働の上限については、年360時間(月45時間)を原則とします。特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間、月45時間を超えて働かせることができる月は年6回まで(いずれも休日労働含む)の限度が設定されています。
(弁護士・小島 俊明)
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