2021年、インドの月面探査機チャンドラヤーン2号が月の表面に水があることを突き止めた。南極のクレーターの永久影に水があり、約50トンとも見積もられている。これは琵琶湖の5分の1に相当する量である。将来、ヒトが月に移住する際にはこの水を飲み水として利用したり、月から火星への航行のために水素燃料として利用したりすることもできる▼
その起源については、地球と同様に月が形成された際にその素材に水が含まれていたとする説や、太陽から放出されるプラズマの太陽風が月のケイ酸塩鉱物と反応して水が生成されているとする説などある▼
ところで、地球は「水の惑星」とも呼ばれ、その表面の約7割が水で覆われている。その大部分である97.47%は海水であり、淡水はわずか2.53%に過ぎない。さらに、その淡水のうちの1.76%は氷河として存在し、0.76%は地下水である。われわれが日常的に目にする川や湖の淡水は、全体のわずか0.01%に過ぎない▼
神戸大学先端膜工学研究センターの松山秀人教授はポリプロピレングリコールの高分子溶液を用いた赤い液体と分離膜を開発して、エネルギーをほとんど使わずに海水を淡水化することに成功した。その技術は海水と高分子溶液の濃度差を利用して海水から淡水を高分子溶液の方に移動させる。その後、70℃以上の温度で淡水を溶液から分離する仕組みである。これまでハワイで行った実証試験では、1日に50万リットルの淡水を生産することができた。日本は繊維やフィルムの技術に優れており、この淡水化プロジェクトに必要な膜を技術的にも商業的にも安価に生産できるため、この淡水化技術に大きな期待が寄せられている
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)
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