Q 当社は小売業を営んでいます。顧客開拓の手段として今後、通信販売を始めたいと考え準備を進めていますが、事業者が第三者に依頼・指示を出して行う広告表示に対する規制が強化されたと聞きました。こうした状況について教えてください。
A 不当表示を防止するための規制は年々強化されています。2023年10月以降、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す、いわゆる「ステルスマーケティング」について、景品表示法に基づく「不当表示」に指定され、規制が施行されました。通信販売サイトなどの準備に当たっては、関係する指針や運用基準を参考に、表示管理に関する体制を整え、組織的に取り組むことを心掛けてください。
不当表示規制の強化
景品表示法には、事業者が行ってはならない不当表示として、①優良誤認表示(同法5条1号)、②有利誤認表示(同法5条2号)、③その他誤認されるおそれのある表示(同法5条3号)の三つが定められています。2014年には、食品の偽装問題などを受けて改正が行われ、不当表示を行った事業者に一定の売上規模に対して課徴金を課す制度も導入されました。
取り扱う商品・サービスの紹介や価格訴求などを行う際には、不当に個客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害しないよう、規制を遵守して対応しなければなりません。
ステマ規制の導入
近年、SNSの普及によりWeb広告やインフルエンサーを使ったマーケティングも当たり前になりました。一方で、事業者が広告であることを隠して商品やサービスの宣伝を行う広告手法(ステルスマーケティング、以下、ステマ)も増え、トラブルや問題となるケースも出てきています。そこで、消費者庁は、ステマを景品表示法上の不当表示の「その他誤認されるおそれのある表示」の一つに指定、23年10月以降は規制されることになりました。
①規制の対象
広告の表示内容全体を見て、宣伝であることがはっきり分からない場合や、「広告」と記載している文字がとても小さいなど消費者が見て広告であると認識できない場合には、ステマと判断されます。事業者が一般の消費者(第三者)になりすまして評価の良い口コミを投稿したり、第三者に商品の無償提供やポイント付与などを持ちかけて口コミを依頼したりするのもステマに当たるとされます。
②違反時のペナルティー
この規制に違反した場合には、措置命令が出されます。社名とともに公表もされ、行為の取りやめや再発防止策が求められます。措置命令に従わなかった場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
ステマ規制への対応
景品表示法では、事業者に対して必要な措置を講ずることを義務付けています(同法26条1項)。事業者は、表示に責任を持ち、消費者の視点に立って分かりやすく、合理的根拠をもって掲載しなければなりません。左記の「事業者が講ずべき景品類の提供及び管理上の措置についての指針」が示す表示等の管理に係る措置に沿って取り組むことが求められます。
①景品表示法の周知・啓発
②法令遵守の方針等の明確化
③表示等に関する情報の確認
④表示等に関する情報の共有
⑤表示等管理担当者の選任
⑥表示等の根拠となる情報の記録・保管
⑦不当表示が発見された場合の適切な対応
ステマ規制に対しては遵守すべきルールを定め、広告やプロモーションに携わる関係者には教育や研修を通じて徹底させましょう。消費者庁が公表しているステマの運用基準を参考に、自社の広告がステマに該当しないか点検することも必要です。もし、ステマに該当する可能性がある場合には広告の中止や広告であることを明記するなど、事業者として適切に対応するよう心掛けてください。
(中小企業診断士・竹内 敏則)
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