政府はこのほど、「令和6年版通商白書」を閣議決定した。同白書では、世界経済の分断の危機が見られる中、ルールベースの国際貿易秩序の再構築、透明・強靱で持続可能なサプライチェーンの構築、間接輸出企業の新規海外展開の後押し、グローバルな競争に勝ち抜ける企業の育成支援などについて述べている。本稿では同白書の要旨を紹介する。
世界の分断が懸念される中、ルールベースの自由な国際貿易秩序の再構築が急務
〇世界経済の回復に地域差が見られる中、インドなどのグローバルサウス諸国は高成長を維持し、わが国企業の事業拡大意欲も旺盛。今後の高成長を確かなものにするには、ガバナンス・対外開放・イノベーションの実現を支援することが重要。
〇全ての国にとって、ルールベースで自由な貿易秩序は経済発展の基盤。WTOの改革は引き続き喫緊の課題。⇒グローバルサウス諸国の自立的発展のため、ガバナンス・対外開放などを支援。WTOの機能回復に向けた取り組みを加速し、グ ローバルサウスを含む全ての国の経済発展の基盤である、ルールベースの国際貿易秩序を再構築。
〇近年のコロナ禍や、地政学的なリスクの高まりにより世界経済の分断が深まる中、特定の国への過度な依存によるリスクが顕在化。同時に、保護主義の台頭への懸念が高まっている。⇒持続可能性や信頼性等の原則やそれに基づく要件が適切に考慮されるような、公平な競争条件(レベルプレイングフィールド)を確保するべく、供給側・需要側両面に働きかけていくと同時に、そうした考え方の下、同志国で協調し、「透明・強靱で持続可能なサプライチェーン」を構築していく。
企業のグローバルな成長拡大を強化
〇円安は輸出の好機にもかかわらず、輸出数量は伸び悩み、国内回帰の機運も高まる中で、輸出力の強化が課題。
〇わが国製造業全体の8割を占める企業も、間接的な輸出により裨益(ひえき)。グローバルなイノベーションを実現するスタートアップの展開に加え、これらの間接輸出企業による直接輸出には、輸出拡大の大きなポテンシャルがある一方、リ ソースや情報・ノウハウの不足が課題。⇒さらなる輸出拡大の実現には、間接輸出企業の新規海外展開を後押しすることが有効。
〇競争力のある製造業企業はグローバル展開し、わが国の雇用や投資に貢献しており、無形資産投資も活用し、さらなる成長拡大を実現。⇒中堅企業を含む国内企業の競争力を強力に後押しし、グローバルな競争を勝ち抜ける企業の育成を支援。
本白書の詳細は、https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2024/index.htmlを参照。
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