不景気や物価高というのは、所得の低い、いわゆるエンゲル係数の高い人に、重くのしかかるものです。
先日、お客さまと4人で食事をしました。一人2万円くらいの中華料理のコースを予約していたところ、食前に店長が「フカヒレをお出ししましょうか?」と、耳打ちしたので黙ってうなずくと、見事なフカヒレが出てきました。しかし、食後の明細になんと20万円と出ていたのには、腰を抜かしました。「うわぁー、値上がりしたんだ」と痛感したのです。値上げ幅も半端ではありませんが、腰を抜かすのは私くらいのものでした。このレベルの店のお客さまはお金持ちで、投資先の株価も上がっているので、物価高も響きません。
不景気対応型モデルを考えた時、一端の富裕層に対応する場合、質が高ければ、1・5倍や2倍の値上げも許容されます。 しかしそれは、国民の15%ほどの人たちだけです。残り85%のうち35%は、物価に見合った額の給料をもらえている人で、それ以外の50%は現在だけではなく、将来の見通しに対してもおびえているのです。35%の人も、値上げラッシュは「対岸の火事」と思うほどゆとりはないので、戦々恐々としています。
ある肉屋さんのハンバーグ工場は、コロナ禍中でもネット販売が好調でしたが、物価が高騰し始めてから、売り上げが前年の3分の1に減少しました。家庭のプチぜいたくだった「肉屋直送のごちそうハンバーグ」、このあたりが一番節約されやすいのでしょう。
不景気対応モデルのもう一端を考える必要があります。指導先の社長は、例えばトマトが180円から250円になっても、何とも思いません。お金持ちには生活の厳しい人の気持ちは分からないのです。しかし、その社長の会社の従業員は、間違いなく50%に属しています。物価高が気にならないとしたら、社長失格と言わざるを得ません。
では50%の人に、どういう戦略が響くか、考えてみてください。
値上げラッシュの中、うちは値上げをしない。これを打ち出すだけでも、お客さまにはアピールになります。納豆1パックの量を5g減らして価格はそのままで割安感を出すといった、ステルス値上げという手もあります。また、仕入れやメニューを工夫し、これまでより安い新商品を開発すれば、この積極性にお客さまは必ず反応してくれるでしょう。食品だけの話ではありません。工夫を凝らし、安くて良い物を開発すれば、新たな活路は切り開けるはずです。
自社のお客さまは15%の層なのか、あるいは35%、50%の層なのか、その層の人たちの気持ちを想像して、対策に打って出てください。
お問い合わせ先
社名 : 株式会社 風土
TEL : 03-5423-2323
担当 : 髙橋
最新号を紙面で読める!