内閣府はこのほど、2024年度の経済財政白書「年次経済財政報告―熱量あふれる新たな経済ステージへ―」を取りまとめ、公表した。白書は「マクロ経済の動向と課題」「人手不足による成長制約を乗り越えるための課題」「ストックの力で豊かさを感じられる経済社会へ」の3章構成。日本経済は30年来続いてきたデフレから脱却し、コストカット型経済から民需主導の成長型経済へ移行する分岐点に差し掛かっているとして、「デフレに後戻りしない経済構造の構築が進んでいるか」「人手不足がもたらす成長制約への対応力は備わっているか」「これまで蓄積してきたストックは有効に活用されているか」という視点から現状と課題を分析し、議論を展開している。
第1章「マクロ経済の動向と課題」では、33年ぶりとなる高い賃上げ率を実現し、企業収益は過去最高、設備投資意欲も旺盛である一方、名目賃金が物価上昇に追い付かず、個人消費は力強さを欠く状態が続いていることを指摘。持続的な賃上げと、依然として進まない中小企業の労務費価格転嫁への対策などが重要であることを示した(図1)。
第2章「人手不足による成長制約を乗り越えるための課題」では、企業の人手不足感が高まり、人材獲得競争が激化している中、省力化投資の強化とニーズの高い分野への効率的な人材の供給が課題と強調。しかしながら日本の労働市場におけるマッチング効率性は低く、ミスマッチの改善や労働移動の円滑化が必要であるとしている。 その解決策として、過剰供給分野から過少分野へ移動を円滑化するリ・スキリングの重要性が強調されている。また、全雇用者の3.4%まで増加した外国人労働者の定着に向けた支援の必要性についても提示している(図2~4)。
第3章「ストックの力で豊かさを感じられる経済社会へ」では、家計の金融資産が増加する中、過半は現預金であり、高齢層は長生きリスクに備えて現預金を取り崩さない傾向にある状況を指摘。一方、NISA拡大とともに、若年層を中心に資産運用機運に高まりが見られることには期待を示している。
また、日本の高齢者は主要先進国の中で男女共に労働参加率が高く、65歳を超えて働く意欲を持つ高齢者は増加していることなどから、就業調整を行わないことによる生涯所得の向上効果の周知や各種制度の見直し、高齢労働者の無形のストックを有効活用するための働きやすい環境の構築などの重要性を示している。
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