日本商工会議所の小林健会頭は11月18日、定例の記者会見で、最低賃金の政府目標が「2020年代に1500円」に前倒しされたことついて、「(目標前倒しの)言葉が独り歩きし、人口に膾炙(かいしゃ)しつつある」と懸念を表明した。「地方の小規模事業者は地方の産業インフラ・商業インフラを担っている当事者であり、その支払い能力を超えてしまうと、例えば、従業員を解雇して家族経営に戻る、事業承継のタイミングで事業そ のものを止めてしまうといったことにもなり得る」と指摘。「一番肝心なことは、政労使で真摯(しんし)に議論していくことだ」と強調し、「特に地方の厳しい環境にある企業の実態、ファクトなどを政労使の場でテーブルに出して議論をしていきたい。お互い真摯な議論をし、何とか良いソリューションを見つけていきたい」と述べた。
「年収の壁」を巡る議論については、「〝103万円の壁〟だけが前面で議論されているが、いわゆる〝壁〟は103万以外にも106万、130万とある。本来的には、この三つは総合的に検討する必要があり、また、大前提として財源の問題を無視することもできない」と述べ、三つの壁の全体を見据えて「社会保障と税の一体改革」の中で議論していく必要性を指摘した。
また、「106万円の壁」で、厚労省が、労働者側の保険料負担を見直し、事業者側の負担を増やせる特例を検討する案を示していることについては、「不公平性を見ている」と指摘。「企業により多い負担を求めるというからには、理由がなくてはならないが、基本的には理由がない。それをするのであれば、企業側にも、負担を軽減する財政措置をぜひお願いしたいということが根底にある。フェアに、平等にやっていこうということだ」との考えを述べた。
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