独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)は11月26日、海外進出日系企業の業績や動向を調査した「2024年度海外進出日系企業実態調査(全世界編)」を公表した。同調査によれば、24年に黒字を見込む企業は65.9%で2年ぶりに増加した。また、24年の営業利益見込みが前年に比べ「改善」と回答した企業の割合はインド、ブラジル、メキシコ、ベトナムなどで高くなった一方、中国、タイ、ドイツ、オランダでは「悪化」の割合が高かった。今後1~2年で現地事業を「拡大」すると回答した企業は45.2%。インドでは8割と拡大意欲が高いものの中国、タイなどでは意欲が後退。全体では、コロナ禍以降停滞が続いている。
同調査は、24年8月後半から9月にかけて海外83カ国・地域の日系企業(日本側出資比率10%以上の現地法人、支店、駐在員事務所)1万8186社を対象に、オンラインにより実施。7410社から回答を得た(有効回答率40.7%)。調査項目は世界共通で、営業利益見通し、今後の事業展開の方向性、競争環境の変化、賃金について結果を報告している。
調査では、24年に「黒字」を見込む企業の割合(黒字割合)は65.9%で前年比2.5ポイント増加。「赤字」は17.0%で前年比1.3ポイント減少した。黒字割合の増加は2年ぶり、赤字割合は19年以降で最も低い値になった。黒字割合は特に中南米、南西アジアで高くなっている。
また、24年の営業利益が前年に比べて「改善」と回答した企業の割合はインド、ブラジル、メキシコ、ベトナムなどで高くなった一方、日本企業の一大集積地である中国やタイ、ドイツ、オランダでは業績悪化を見込む企業の割合が高かった。業種別に見ると、製造業では医療機器で前年より「改善」と回答した企業の割合が61.8%となり最高。非製造業ではホテル・旅行の56.0%が最高で、人材紹介・人材派遣や法務・会計・税務などのサービス業も好調な結果となった。
今後の事業展開の方向性については、今後1~2年で現地事業を「拡大」すると回答した企業は45.2%(前年比1.8ポイント減)。コロナ禍以降、5割を下回る水準で停滞が続いている。国・地域別では、インド(80.3%)、ブラジル(65.1%)、UAE(60.2%)などで拡大志向の企業割合が高い一方、需要の不振が続く中国、タイなどでは「現状維持」の割合が高く、中国は「拡大」が21.7%と初めて3割を切った前年からさらに6.0ポイント減少した。
拡大志向が高い業種は食品・農水産物加工品(70.9%)、医療機器(70.9%)、人材紹介・人材派遣(71.4%)など。建設・プラント、コンサルティングなどは「拡大」の割合が前年から大幅に減少した。事業拡大の理由は「現地市場ニーズの拡大」が66.8%と最も多く、次いで「輸出の増加(30.2%)」「高付加価値製品・サービスの受容性が高い(23.3%)」「競合他社と比べて優位性が高い(19.5%)」の順となった。拡大する機能は「販売」が70.8%で最多だった。
競争環境の変化については、進出先で主要製品・サービスの市場シェアが19年比で「増加」した企業は、南西アジア、中東、アフリカで5割超。一方、北東アジアでは「縮小」が「増加」を上回った。進出先における競合相手の数が「増加」と回答した企業割合は45.5%。インドやメキシコでは欧米企業、タイやベトナムでは中国企業の進出が加速している。また、競争において力を入れている対策では「営業・広報の強化」が4割超。コストや価格による対策は限界を迎えつつあるとみられている。
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