センシング技術で電力量を見える化 世界的な社会問題の解決に取り組む
株式会社SIRC(サーク) 代表取締役CEO 髙橋 真理子(たかはし・まりこ)
転身のきっかけは小さなデバイスとの出合い
当社は2015年、大阪市立大学発のスタートアップ企業として創業しました。始まりは、同大学の教授だった辻本浩章氏が長年の研究を実らせ、多機能デバイス「SIRCデバイス」の開発に成功し、特許を取得したことでした。当時、ベンチャーキャピタルに勤めていた私は創業前から事業化支援を担い、創業時に資金調達担当役員として参画しました。ベンチャーキャピタルを退職した後、19年からは当社の代表を務めています。
SIRCデバイスの特長は、5㎜角と小型ながら、住宅の外などに設置されている電力量計とほぼ同等のことができる点です。その技術を活用した主力商品「IoT電力センサユニット」は、工事不要で簡単に取り付けでき、工場などで設備ごとの消費電力を計測することが可能です。個別の消費電力を把握することで、省エネや脱炭素の実現に向け、具体的に対策できるようになります。また、設備の異常にも早期に気付くことができます。当社ではセンサのほか、計測したデータを簡単に活用できるクラウドサービスなども提供し、企業の省エネ対策を支援しています。
しかし、創業時は私たちも世間も、今ほど環境問題への意識が高くなかったように思います。そのため、電力を個別計測することの必要性が明確になっておらず、市場に受け入れられる商品企画を立てることが困難でした。また、知名度や実績がない中、資金調達や人材の採用にも苦労しました。20年、政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発出したことなどにより、個別機器の消費電力を把握する必要性が明確になり、市場にもその重要性が広く認識されるようになりました。カーボンニュートラルに取り組む大企業との資本業務提携を進めることもでき、資金調達や人材採用の課題を乗り越えられました。多くの「人財」に恵まれ、他社と連携しながら、当社が成長し続けられていることをうれしく思います。
国内で評価が高まり 海外展開も目指す
当社のセンサ導入社数は250社を超え、また、「IoT電力センサユニット」が省エネ性に優れた製品などを表彰する「省エネ大賞」を受賞でき、評価の声が広がっているのを実感しています。今後もさまざまな企業に当社の商品やサービスを導入してもらうことで、脱炭素化に貢献していきたいです。また、脱炭素化は世界共通の課題なので、日本で培ったソリューションを海外にも展開したいと考えています。
現在、独立行政法人国際協力機構(JICA)とともに、ルワンダの水道インフラの課題を可視化し、漏水調査やエネルギー効率の改善に取り組む活動を進めています。こうしたインフラの安心安全につながる事業を展開し、世界的な社会問題の解決に貢献できるよう、これからも励んでいきたいです。
会社データ
社名 : 株式会社SIRC(サーク)
所在地 : 大阪府大阪市中央区久太郎町2-5-31 関電不動産船場ビル9F
電話 : 06-6484-5381
創業 : 2015年
事業概要 : 製造業(独自の特許技術センサの開発、販売)
HPはこちら : https://sirc.co.jp/
※月刊石垣2025年3月号に掲載された記事です。