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こうしてヒット商品は生まれた! なんじゃこら大福

イチゴ、栗、チーズの三つが、ミスマッチのように見えて、実は絶妙な味わいを醸し出す。1個380円(税込)

昭和26年に菓子の製造販売で創業し、現在宮崎市内に「お菓子の日高」を7店舗運営する日高信義商店。今や同店の代名詞となっている看板商品が、63年に発売した「なんじゃこら大福」だ。テニスボールほどもあろうかという迫力の大きさと絶妙な味わいが多くの人に満足感をもたらし、累計販売数1000万個を突破するロングランヒット商品に成長した。

業績回復を目指して「大福まつり」を企画

初めて食べた人は、思わず「なんだこりゃ⁉」と言ってしまうのではないだろうか。テニスボールほどもある巨大な大福の中には、あんこと共に3種類の食材がギュッと詰まっている。「ひと口食べるとイチゴ、ひと口食べると栗、ひと口食べるとチーズ」がキャッチフレーズで、絶妙な味わいを楽しめる一品だ。「なんだこりゃ」を宮崎弁風に言うと「なんじゃこら」となることから、そのまま「なんじゃこら大福」という名前になった。 同商品が誕生したのは、昭和63年の年明け間もないころだ。

「実は当時、売り上げが低迷していて、何とか打開したいと思っていました。そこで、売り上げアップを目指すセミナーに参加したところ、会社の強みを生かすことが大事だと教えられました。当店でも強みを生かした新商品をつくり、お披露目のイベントを開催して、売り上げアップにつなげようと考えたんです」と同店社長の日高久夫さんは振り返る。

すぐに企画したのが「大福まつり」だった。和菓子や洋菓子を多数扱ってきた同店だが、1番の売れ筋は大福だったのだ。そこで普通の大福や豆大福、当時ブームとなっていたイチゴ大福などの既存商品のほか、イベント限定商品を加えて20種類にし、「ホワイトデーに、お返しに白い大福を」と銘打って、チラシなどで告知した。

イベント限定商品から店の定番商品に昇格

長年、和菓子をつくり続けてきた経験から、大福のアイデアは次々と浮かんだ。きなこ、ゴマ、ヨモギなど、和菓子と相性のよい食材をアレンジしたものから、コーンやウインナーソーセージなど意外性に富んだものまで試作に励んだ。そしてイベントの4~5日前になり、ふと、もっとインパクトのある商品が必要なのではと思い始め、一つだけサイズの大きなものをつくろうと思い立つ。同店の既存商品でも人気のイチゴ、栗、クリームチーズを組み合わせ、あんこでくるんで団子状にして、それを求肥(ぎゅうひ※)で包んだ大きな大福を完成させた。

「初の試みだったので、甘党の友人に試食してもらったんですよ。すると開口一番、『な、なんかこら⁉』と。これはいける!と確信しました。そのときの彼の言葉をアレンジして商品名にし、お客さんにもこんな風に驚いてもらいたいと思いました」

こうしてできた20種類の大福は、イベントの3日間限定で店頭に並んだ。前評判を聞きつけた市内の人が店を訪れ、イベントは盛況のうちに幕を下ろしたが、何と1番売れたのは最も値段の高い同商品だった。ネーミングのおもしろさもさることながら、甘味、酸味、塩味が入り混じった絶妙な味わいがクセになるのだ。そのため1度買いに来た客が、「おいしかったから、友だちにも買ってあげたい」「贈り物に使いたい」とリピートするケースも少なくなかったという。

「イベント終了後は、通常のラインナップに戻すつもりでしたが、予想以上の反響に1個220円の売価で定番化することにしました。ただ、ショーケースに入れてしまうと、単に大きいだけでそのほかの特徴が分かりません。そこでPOPを立てたり、興味を示したお客さんには丁寧に説明しながら薦めたりしました」

1個で3度おいしい満足感から口コミでじわじわと広がり、売れ行きは徐々に伸びていった。ある日、同商品のファンの投稿が地元のラジオ番組で紹介されると、テレビ局が取材に来るなどメディアに取り上げられるようになり、一気に認知度が高まり同店の看板商品となっていった。

宮崎の定番土産品としてブランディングしたい

その後、冷蔵配送サービスの普及により全国への発送が容易になると、さらに売れ行きが加速していく。同商品は生地に餅でなく求肥を使用しているため、冷やしても固くならず、消費期限も4日ほどあることが奏功した。こうして平成10年前後に年間45~55万個と売れ行きのピークを迎え、その後落ち着きを見せるも、年間30万個ほどで推移。とうとう昨年の11月に累計販売数が1000万個を突破した。

「現在も1日約800個のペースでつくっていますが、1番よく売れるのは春先なんです。この時期はプロ野球やサッカーのチームが宮崎でキャンプを行うのに合わせて、多くの報道陣やファンが各地から集まってきます。その方々の中に『なんじゃこら大福』のファンの方が結構おられて、キャンプ地への行き帰りに立ち寄ってくださるんです。そういう意味で、この商品は観光客の土産物という側面が強くなっている気がします」

同商品のロングランヒットもあって同社の業績は順調に推移し、現在は宮崎市内に7店舗を構えるまでになっている。しかし、県外に店を出すつもりはないと日高さんは言う。

「宮崎県は、海産物に畜産物、野菜に果物と食材の宝庫ですが、これといった土産物がありません。近年ではアジアからの観光客も増えていて、あんこの味を好む人も多い。ですから『なんじゃこら大福』は、基本的に宮崎に来たら買えるものにしたいんです。そして今後、宮崎を代表する定番土産の一つとして、ブランディングしていけたらと思っています」と今後の展望を語った。

※白玉粉に砂糖や水あめを加えて煮つめながら練り上げたもの

会社データ

社名:有限会社日高信義商店

住所:宮崎県宮崎市橘通西2-7-25

電話:0120-86-5300

HP:https://okashinohidaka.com/

代表者:日高久夫 代表取締役

設立:昭和34年

従業員:70人(パート含む)

※月刊石垣2017年月号に掲載された記事です。

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