日本商工会議所の小林健会頭は3月7日、連合の芳野友子会長と都内で会談し、持続的な賃上げ、価格転嫁、最低賃金などをテーマに意見交換を行った。日商と連合は、中小企業の持続的な賃上げに向け、取引の適正化などを後押ししていく考えで一致。小林会頭は、「日本経済が真に力強さを取り戻すためには、物価と賃金の好循環により実質賃金を上げていかなければいけない。今年の春闘は非常に重要」と述べたのに対し、芳野会長は、「昨年は33年ぶりの5%台の賃上げが実現したものの、生活向上を実感するには至らず、消費は低迷している。賃上げの流れを働く全ての仲間に波及させ、新たなステージを定着させるには、今がまさに踏ん張りどころだ」と応じた。
日商の小林会頭は、賃上げの原資について、「中小・小規模企業の労働分配率は下がってきているが、大手・中堅と比べると依然高い」と指摘し、「原資の確保には、中小企業自己変革による付加価値向上とともに、価格転嫁の商習慣化が重要」との考えを表明。また、「〝良い製品や良いサービスには値が付く〟という考え方を社会全体に浸透させていくことが重要」と述べ、労働者への働き掛けについて、連合に協力を求めた。 最低賃金については、日商調査において、「2020年代に1500円」とされた政府目標について、「対応不可能または困難」との回答が7割以上を占めたことに触れ、「最低賃金を引き上げていくこと自体に異論はないが、問題はその上げ幅とスピード。地方・中小企業の実態を十分踏まえ、法定3要素(賃金、生計費、支払い能力)に基づく検討が不可欠」と述べ、政府への働き掛けについて、連携に期待を示した。
連合の芳野会長は、「賃上げの流れを波及させ、新たなステージを定着させるためには、企業規模間の格差是正に向けた適切な価格転嫁の徹底が不可 欠」と述べ、政府に対して、環境整備を強く求めていく方針を表明。また、「地方版政労使会議を通じて、適正な価格転嫁や賃上げについて認識を合わせるとともに、地場・地域における経済・産業に関わる課題認識を共有した上で、地域の活性化につながるよう連携を強化していくことが重要」との認識を示した。