政府は3月28日、第32回新しい資本主義実現会議(議長・石破茂首相)を開催し、価格転嫁・官公需、生産性向上、事業承継・M&Aの推進などについて議論を行った。オンラインで会議に出席した日本商工会議所の小林健会頭は、価格転嫁・官公需などの取引適正化について「中小企業・小規模事業者が成長型経済の中でチャレンジを続けるには、まずは投資を進めること。特に地方への投資が重要だ。その果実の分配としての持続的な賃上げが求められる」と主張した。
取引の適正化に向けては、「賃上げなどを可能とする原資確保のためには、『適正価格での売買が巡り巡って自らの所得向上につながる』といった認識がしっかり定着するよう、国全体として取引の適正化の動きを確実に進めていくべき」との考えを改めて強調。政府に、官公需における価格転嫁対策の強化を求めるとともに、ローカルPFIなどの仕組みの推進による後押しを要望した。
中小企業・小規模事業者の生産性向上については、経営者の自己変革への挑戦に向けた強力な後押しの必要性を強調した一方、深刻さを増す人手不足に触れ、業務効率化や省力化に資する設備投資への支援拡充を要望。また、企業の「稼ぐ力」の強化を伴走支援する各地経営指導員の支援体制拡充などを求めた。
事業承継とM&Aの推進については、「『地方創生2・0』に貢献するためにも事業承継税制の特例措置の恒久化が必要不可欠」と主張するとともに、「M&A市場における取引価格の相場観醸成や、悪質仲介業者に対する監視など、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境整備も重要」との考えを示した。
石破首相は、価格転嫁・官公需などの取引適正化に向け、「抜本的に強化する」と述べ、新たに施策パッケージを策定し、総合的な取り組みを進める考えを表明。中小企業・小規模事業者の生産性向上については、特に人手不足が深刻な業種をきめ細かく支援するため、業種別の「省力化投資促進プラン」を策定し、2029年までの5年間を集中取り組み期間として定める方針を示した。
また、事業承継・M&Aの推進についても、新たな施策パッケージを策定し、施策を抜本的に強化する考えを表明。各パッケージについては、5月中に取りまとめ、6月に改訂する新しい資本主義基本計画に反映するよう関係閣僚に指示した。