人口、経済、社会などに関しその集団の状態を客観的に把握する統計は、その姿を映し出す「鏡」であり、進むべき方向を示す「羅針盤」となります。そして国は、政府統計の総合窓口(e―Stat)などを通じて多くの統計調査を公表しています。
データ活用と聞くだけで、お金や手間がかかると思われる人も多いかもしれませんが、実はかなりのことが無料でできるようになっています。
本コラムでは、公的な統計データを中心にその利活用方法を紹介することで、自分たちの取り組みやビジネスの成功確率を上げるヒントを提供します。
3ステップで分析
初回は、人口統計や事業所調査が地図上に表示され、商圏分析がすぐにできる「地図で見る統計」(jSTAT MAP)を説明します。
一見、難しそうですが、基本は、①ネットで「地図で見る統計」と検索②ログインして「統計地図作成」をクリックし「リッチレポート作成」を選択③地図で場所を指定――の3ステップ(図1)です。
厳密には、ログインするためのユーザー登録や、商圏の半径を細かく設定する必要がありますが、基本はこの3ステップです。たったこれだけのことで、指定した商圏の年齢別人口や世帯数、事業所数などがエクセル形式で提供されます。
図2は、中央区役所(東京都)を中心に、半径250メートル(1次エリア)、500メートル(2次エリア)、1キロメートル(3次エリア)の商圏を打ち出したもので、徒歩圏内の3次エリアまで含めると実に3万4387人もの住民がおり、2万652世帯あるうちの約6割が単身世帯であることなどが分かります。
指定した商圏の市場規模を推計
これら統計データから、さまざまなことが示唆されます。
例えば、15歳以上の人口3万654人のうち就業者数は1万7028人で、いわゆる専業主婦(主夫)などが一定数存在すると考えられ、中央区役所近辺のマルシェ開催は、相応の需要を集める可能性があると考えられます。
さらに、「家計調査」の「1世帯当たり年間の品目別支出金額」を参照することで、指定した商圏における市場規模を推計できます。
例えば、2024年総世帯平均で「パン」に年間で2万7795円を支出しており、2万652世帯では5億7千万円以上の市場があることになります。
他にもさまざまな活用ができますので、まずはネットで「地図で見る統計」と検索してみてください。
(一般財団法人ローカルファースト財団理事・鵜殿裕)