4月2日、トランプ米大統領は、2024年の対中国貿易赤字が年間1・2兆ドル(約185兆円)を超える見込みであること、そして国内製造業の空洞化を「国家の緊急事態」と位置付け、強硬な関税政策を打ち出した。大統領権限によって発動されたこの措置は、世界経済に大きな波紋を広げている▼
当初、中国に対して課された関税は20%。しかし、その後の経済的・政治的な動きを背景に、関税率は54%、104%、125%と上がり、ついには145%と急激に引き上げられた。その影響は中国だけにとどまらず、ベトナムには46%、ドイツには20%、日本にも24%の関税が課された。現在は全て一律10%に調整されているが、その過程で各国との緊張は高まった▼
中国はこれに対し、報復関税を段階的に引き上げ、最終的には米国製品に対し最大125%を課すなど真っ向から対抗した。他にもカナダやメキシコ、EU諸国も独自の対抗措置を講じている▼
こうした中、ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は、わずか6日間で4579ドル(約10.8%)下落し、世界の株式市場は混乱に包まれた▼
経済の専門家たちは、「トランプ関税は第2次世界大戦以降の自由貿易の原則から著しく逸脱しており、米国経済そのものに深刻なインフレ圧力をもたらす」として、強く批判し、警告している▼
日本政府に求められるのは、中国のように感情的な対抗措置を取るのではなく、冷静な対応を取ることである。経済の基本を理解する者であれば、この政策が長期的に国民の支持を失い、やがて行き詰まることは想像に難くない。トランプ流の「アメリカ・ファースト」が、世界経済の大きな転機となるかもしれない
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)