「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が5月16日、成立した。同法は、事業者間における価格転嫁および取引の適正化を図ることを目的に、下請代金支払遅延等防止法(下請法)、下請中小企業振興法(下請振興法)について規制内容・適用対象などを見直したもの。「下請」の用語を廃止し、法律の名称についても下請法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、下請振興法は「受託中小企業振興法」に改められた。改正法は2026年1月1日より施行される(一部の規定は法律公布日から施行)。
法律の概要(改正点)は以下の通り。
〈下請法関係〉
〇協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(価格据え置き取引への対応)
対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明または情報の提供をしないことによる一方的な代金の額の決定を禁止する。
〇手形払いなどの禁止
対象取引において、手形払いを禁止する。また、その他の支払い手段(電子記録債権やファクタリングなど)についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止する。
〇運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)
対象取引に、製造、販売などの目的物の引き渡しに必要な運送の委託を追加する。
〇従業員基準の追加(適用基準の追加)
従業員数300人(役務提供委託などは100人)の区分を新設し、規制および保護の対象を拡充する。
〇面的執行の強化
関係行政機関による指導および助言に係る規定、相互情報提供に係る規定などを新設する。
〇その他所要の改正を行う。
〈下請振興法関係〉
〇多段階の事業者が連携した取り組みへの支援
多段階の取引からなるサプライチェーンにおいて、2以上の取引段階にある事業者が作成する振興事業計画に対し、承認・支援できる旨を追加する。
〇適用対象の追加
製造、販売などの目的物の引き渡しに必要な運送の委託を対象取引に追加する。また、法人同士においても従業員数の大小関係がある場合を対象に追加する。
〇地方公共団体との連携強化
国および地方公共団体が連携し、全国各地の事業者の振興に向けた取り組みを講じる旨の責務と、関係者が情報交換など密接な連携に努める旨を規定する。
〇主務大臣による執行強化
主務大臣による指導・助言をしたものの状況が改善されない事業者に対して、より具体的措置を示して改善を促すことができる旨を追加する。
〈用語の見直し〉
「下請」という用語は発注者と受注者が対等な関係ではないという語感を与えるなどの理由から下請事業者を「中小受託事業者」、親事業者を「委託事業者」などに改める。また、下請法を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、下請振興法を「受託中小企業振興法」に改める。
詳細は、こちら(中小企業庁ウェブサイト)を参照。