日本商工会議所は7月17日、「地域の〝稼ぐ力〟を高めるまちづくりに関する意見~まちの個性と価値が生み出す活力ある都市への再生に向けて~」を取りまとめ、公表した。意見書は、政府において、まちづくり・都市再生政策の今後の在り方や支援策の方向性などに関する議論が行われている中、全国の商工会議所・事業者などから寄せられた意見を踏まえ、取りまとめたもの。同日には、日商のまちづくり・地域経済循環推進専門委員会の亀井信幸委員長(茅ヶ崎・会頭)と阿部眞一副委員長(佐久・副会頭)が国土交通省の中田裕人都市局長らに意見書を手交し、内容の実現を強く求めた。
意見書では、地方都市が「地域経済循環の結節点」として極めて重要な役割を担っているものの、人口減少に伴う経済規模の縮小などの課題を抱える中、十分な役割を発揮できず、若者・女性が求める都市機能との乖離(かいり)を生じさせているとの認識を強調。地域に新たな付加価値を生み出すエンジンとして地方都市の位置付けを強化し、都市固有の魅力や特性などを踏まえた都市再生を加速化する必要性などを指摘している。
具体的な意見項目としては、①都市再生を巡る現状と課題②地方都市の役割・位置付け③都市再生・まちづくりの目指す方向性・講じるべき施策――の3本柱を提示している。①では、地方都市が少子高齢化や若者・女性の流出という「二重の人口減少」に直面し、経済規模が縮小する中、地域企業などにとっても「ビジネスが成立する場」としての地方都市の魅力・磁力が低下し、都市間格差を拡大させる負のスパイラルに陥っていると指摘。また、民間の国内投資意欲の高まりや急増するインバウンドによる観光需要の拡大もあって、地方経済・地方都市は大きなチャンスを迎えているものの、多くの地方都市では社会変化に即した都市構造の変革を推進する力が低下しているとの認識を強調した。また、人口減少下では、公共サービス・生活サービス機能などを各自治体が個別で整備する「フルスペック型」の都市の在り方が限界を迎えているものの、近年の物価高や金利上昇で一部の地域は都市開発コストが上昇し、「利益回収の見通しが立ちにくいエリアに変容している」との見方を示している。
②では、「若者・女性のニーズを捉え、選ばれる地方都市を実現するためには、都市の個性や質・価値を高め、都市の利便性と地方の豊かさの融合を図ることが重要」との認識の下、都市政策における地方都市の役割の明確化と位置付けの強化が必要と主張。また、「『ローカルファースト』を実現する上でまちなかは極めて重要な意義を有する」との認識の下、働く・暮らす・遊ぶ・学ぶといった地域住民・来街者のアクティビティーを満たす「生活街」としてまちなかを再生することが不可欠と主張している。
③では、「自立的で共創型のまちづくりを推進するためには、ビジネスが成立する場としての経済的な価値の追求と、ウェルビーイングを高める公共的な価値の提供が不可欠」などの認識を強調。「まちづくり会社などの体制強化」をはじめ、「都市再生に向けた投資コストの低減」「地域の稼ぐ力を高める産業立地に向けた産業用地の確保」など、目指す方向性と講じるべき施策を記載した。
意見書を受け取った中田局長は、「行政が民間の活力を生かし切れていないという課題認識は共通しており、いかに官民が同じ方向を向いて取り組んでいくかが重要」と述べ、意見書の方向性に理解を示した。