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コラム石垣 2019年4月21日号 丁野朗

凡そ人の住むところには必ず産業・生業(なりわい)がある。生業がなければ人は生きていけないからである。こうした生業を生かしたツーリズムの試みが、近年、各地で盛んである。その典型例が神奈川県小田原市の「なりわいツーリズム」である。

▼小田原は北条以来の城下町であるが、東海道が整備された近世以降は、街道一の宿場町として栄えた。かまぼこをはじめかつお節、干物などの海から生まれたなりわい、箱根に続く山の資源を生かした漆器や寄せ木細工、ちょうちんなどの山なりわい、曽我梅林の梅などの里なりわいなど、多様な産物となりわいが生まれ今日に至っている。小田原の観光は今でも小田原城が原点だが、近年はこうしたなりわいを視察し、味わい、体験するまち歩きに力を入れている。

▼3月初旬、その小田原で「日本まちあるきフォーラム」が開催された。「夜のまちあるき」に始まり、講演会やテーマ別ワークショップなど3日間にわたる行事には、九州「長崎さるく」や路地裏探偵団の「ひろさき街あるき」、北九州タウンツーリズムなど、全国から30地域以上のまちあるき仲間たちが集まった。

▼こうした小田原の試みは、20年も前に市民シンクタンクである「小田原市政策総合研究所」による「まちづくり」と「まちあるき」を掛け合わせた多様な事業提案から始まった。その成果の一つが、「小田原宿なりわい交流館」(まち歩き拠点)や個々の商店が参加する「小田原街かど博物館」である。

▼小田原観光の究極の狙いは、生業の再生・活性化にある。観光客が単に増えても、これが真の地域活性化につながらなければ意味がない。まさに地域に根差した観光の一つのモデルである。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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