日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2019年4月11日号 宇津井輝史

平成がまもなく幕を下ろす。どんな時代だったのか。地震や風水害など天変地異に見舞われたのは、被災地の方々はむろん、多くの国民にとってつらい経験だった。絆という言葉を安易に使うべきではないが、この列島に生きることの厳しさとともに、国民が痛みを分かち合う意味を実感した30年だった。縁起を重んじ、改元が皇位継承時ならずとも行われていた江戸時代以前なら、たぶん2度改元されていたことだろう。

▼一方、日本経済は拡大し続けたが、国民が好況を実感しにくい30年だった。経済モデルが国民国家に対応しなくなったため、先進国の暮らし向きがこぞって上向くことはもはやない。偶然にせよ、平成は社会主義の瓦解とともに始まった。資本主義の勝利というより、社会主義国家が予想どおり行き詰った結果である。資本主義、自由主義の旗頭である米国の主導で市場原理とグローバル競争が徹底された。金融工学とIT革命が結びついて、資金が実物経済から遊離してゆく。同時にインターネット技術が私たちの消費や労働の形を変えた。

▼他方で福祉国家のモデルも瓦解し、資本主義を維持するために賃金が抑えられ、先進国で格差が広がり、より安い労働力を移民に頼ることが常態化。そこに宗教対立も絡んで社会の不安定を招き、先進国の政治が軒並み混迷の度を深めている。さらにAI(人工知能)に仕事を奪われる不安を人々が抱えるに至った。平成とはむろん日本だけの時代区分だが、この30年で出現した右のような世界をどう打開し、希望を取り戻してゆくのか、人類の叡智が試されている。

▼改元は古来、人心一新を願って行われてきた。新元号の「令和」にも政府のそんな思いが込められていよう。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

次の記事

東洋大学大学院国際観光学部客員教授 丁野朗

凡そ人の住むところには必ず産業・生業(なりわい)がある。生業がなければ人は生きていけないからである。こうした生業を生かしたツーリズムの試みが、近年、各地で盛んである。…

前の記事

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

米中の貿易戦争は、トランプと習近平の二人の言動に注意が行きがちだ。しかし、多くの識者が指摘するように、この根底には、米国と中国の覇権争いがある。自由に価値を置くリベ…

関連記事

政治経済社会研究所代表 中山文麿

中国の習近平国家主席は尖閣諸島を台湾と同じく核心的利益と位置付けている。同氏は国家主席の定年制を撤廃して終身任務に就くことを可能とし、国民に「中国の夢」を語り、建国…

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

例年の春ならば、都心を忙しそうに歩く就活生の姿がめっきり減った。オンラインによる面接が一般化してきたためだろう。面接室に入って来たときのあいさつ、複数の面接官に対す…

観光未来プランナー 丁野朗

もう何度目かの訪問となるが、3月半ば、福井県の九頭竜川上流域にある勝山市の平泉寺白山神社を訪ねた。平泉寺は、717(養老元)年に泰澄によって開かれた1300年の歴史を持つ古…