創業1927年の老舗である石井石材は、墓石を中心に石材加工や施工、販売を幅広く手掛けている。施工実績は、伊豆エリアにおいてトップクラス。創業より堅実に事業を展開し、2018年に石井幸太郎さんが四代目に就いた。顧客のニーズをくみ取った真摯な対応で〝縁〟を結び、育んでいる。
物心つく前からあった 事業承継というレール
温泉街として歴史ある静岡県伊東市。名だたる文人墨客が、観光に、別荘地にと選んだ地で、今も国内外から多くの人が足を運ぶ。そんな風光明媚(めいび)な地に、石井石材はある。四代目で代表取締役社長の石井幸太郎さんは、初代の石井幸平さんのひ孫に当たる。だが「代々創業家ではない」と切り出した。
「子どもがいなかった初代が、本家の子を養女にして、その夫が二代目になりました。しかし、相当な放蕩(ほうとう)者だったそうで、初代の判断で離縁となり、当時まだ6歳で後に三代目となる私の父と、二人三脚で事業を軌道に乗せていきました。私が3歳の時に初代は亡くなっているのですが、可愛がってもらった記憶はかすかに残っています」
三つ子の魂百までと言うが、石井さんは、すでに保育園の卒園アルバムに「石屋になる」と書いていたという。「家族や周囲からの刷り込みの成果」と苦笑しながらも、家業を継ぐ以外の夢がなかったわけではないと語る。だが、物心つく前に周囲が敷いたレールは強固で、そこから外れるには相応の覚悟と熱意を伴った。長男の石井さんは、後を継ぐ選択をし、大学卒業後の進路を固めた。すると、事業承継のレールが思わぬ方向に伸びた。縁もゆかりもない山形県の石材商社への就職。寝耳に水の〝修業〟が始まった。
家業に新風を吹かせて 客のニーズに対応
石井さんにとっては不本意な展開だったが、後に修業先の直属の上司が人生のキーパーソンとなる。 「取引のある会社で修業させても、石井石材の息子として優遇されてしまう。それを懸念した父が、飛び込み営業で来た人の人柄や、会社の業績を見込んで頼んだそうです」
上司は会社の次期社長で元銀行員だったため、会社経営やマーケティングのいろはを学び、産学連携プロジェクトや展示会の設営などにも携わることができた。研修では石材の輸入国である中国やインドにも渡り、採掘や加工の現場を目の当たりにする。産地や石の種類による特徴や品質の違いを体感できる、貴重な経験を積んでいった。
「24歳で家業に入りました。先代は〝習うより慣れろ〟の考えで、入社約1カ月でお客さま営業を任されます。それも新規のお客さまとあって、とにかく必死に対応しました。幸い初担当は無事に終えましたが、うちのお客さまの年齢は、70〜80代が中心です。20代だった私に対し、時折『お兄ちゃんじゃ力不足』と若さを理由に、担当を替えられることがありました」
その悔しさをバネに、石井さんは墓石のデザインに力を入れ、若さを強みにした提案を行った。さらに、お墓づくりと家づくりの共通点を見いだし、休日に住宅展示場を見て回ったり、住宅パンフレットやカタログから販促ツールの見せ方を研究したりしたという。そうした中、発案したのが2種類の石を組み合わせたお墓づくりだ。石材加工時の余った石は産業廃棄物扱いになるが、利活用すれば墓石の個性になる。「派手過ぎる」と先代を筆頭に社内で大反対されるが、顧客のニーズはあった。それも同業他社が模倣するほどに。
「お客さまのお墓づくりの選択肢が広がり、石の廃棄量も減り、脱炭素にも貢献できる。弊社の年間材料費を6%抑えるなどの好循環が生まれました」
樹木葬や墓守サービスなど 時代に合わせて柔軟に挑む
四代目就任後は、月次決算を導入し、年間の利益率を5%向上させた。店舗数の見直しや本社の改装で集客アップを図り、樹木葬にも取り組んで、自然葬墓地の開設や樹木主体のお墓の設計・施工も手掛けるなど、経営手腕を発揮する。
「毎日の朝礼を欠かしません。社員にも業務上迷いが生じた時の判断は、①善か悪か②お客さまの利益になるか③会社の利益になるかの三つを基準に考えてほしいと伝えています。お客さまの利益は、心の豊かさや充足感も含まれます。お客さまとの縁は次世代、次々世代と100年先までつながっていく事業です」
昨今、墓じまいや永代供養が増えているが、その背景には少子高齢化があり、地方ほど状況が深刻と語る石井さん。墓参りの代行やクリーニングを行う墓守サービスを手掛ける一方、地域に恩返しができたらと、地域活動にも熱心で、伊東商工会議所青年部(伊東YEG)に所属し、22年には会長を務めた。「委員長を経験してYEGを深く理解したい」と持論を説いて、委員長や監事などさまざまな役職に就き、地元を盛り上げている。
「『約束と納期は守れ』『他社ができて自社ができないことをなくす』という先代の教えは踏襲していますが、今も、会長になった先代には何をするにも反対されてばかり。小学4年生の一人娘がいますが、世襲にこだわらず、物心両面で事業を理解してくれる人、特に心を重要視して後継者を選んでいきたいです。100年先もお客さまに、信頼される企業として続いていることを願います」
27年に創業100年を控える今、供養に関する相談役としての〝質〟と〝縁〟に磨きをかける。
会社データ
社名 : 株式会社石井石材(いしいせきざい)
所在地 : 静岡県伊東市音無町1-35
電話 : 0120-51-1425
HP : https://ishii-sekizai.co.jp
代表者 : 石井幸太郎 代表取締役社長
従業員 : 14人(パート含む)
【伊東商工会議所】
※月刊石垣2026年1月号に掲載された記事です。
