日本政策金融公庫はこのほど、「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」の結果を公表した。調査方法はインターネットによるモニター調査。4759者から回答を得た。本稿では、その概要を紹介する。
■後継者の決定状況
○中小企業の事業承継の見通しを見ると、後継者が決まっており後継者本人も承諾している「決定企業」は12・5%にとどまり、事業承継の意向はあるが後継者が決まっていない「未定企業」が22・0%、自分の代で事業をやめるつもりの「廃業予定企業」が52・6%、自分がまだ若いので今は決める必要がない「時期尚早企業」が12・9%となった。「廃業予定企業」の割合は、2015年調査の50・0%と比べてわずかながら上昇した。
○「廃業予定企業」は、従業者数「1~4人」の企業が83・3%を占めており、ほかと比べて規模が小さい企業が多い傾向にある。
■決定企業
○「決定企業」の後継者候補を見ると、「長男」が45・2%、「役員・従業員(親族以外)」が16・3%、「長男以外の男の実子」が10・1%、「その他の親族」が8・8%などとなった。15年調査と比べると、子どもの割合が高い傾向は変わらない。一方、「長男」の割合が低下し、「その他の親族」「役員・従業員(親族以外)」の割合が上昇するなど、子どもや親族以外への承継が増えていることが分かる。
○事業承継の際に問題になりそうなことは、「後継者の経営能力」が32・0%、「相続税・贈与税の問題」が23・7%、「取引先との関係の維持」が22・8%と、多岐にわたっている。「特にない」との回答も32・6%あるものの、全体では少数派であり、約7割の企業が問題になりそうなことを抱えていることが分かる。
■未定企業
○後継者候補がいる「未定企業」の後継者候補を見ると、「長男」が36・4%、「役員・従業員(親族以外)」が24・0%、「社外の人(親族以外)」が14・8%などとなった。15年調査と比較すると、「長男」の割合が低下する一方、「役員・従業員(親族以外)」「社外の人(親族以外)」の割合が上昇している。
○「未定企業」の事業売却に関する意識を見ると、「現在売却を具体的に検討している」が4・5%、「事業を継続させるためなら売却してもよい」が45・5%と、半数の企業で事業売却の可能性があることがうかがえる。
○引き継いでもらいたい経営資源は、「事業全体」(50・3%)のほか、「従業員」(26・0%)、「販売先・受注先(企業・一般消費者など)」(17・8%)、「設備(機械・車両など)」(16・0%)などが挙げられている。「引き継いでもらいたい経営資源はない」は28・8%で、約7割の企業が何らかの経営資源を引き継いでもらいたいと考えている。
■廃業予定企業
○「廃業予定企業」に廃業理由について尋ねたところ、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」が43・2%と最も高い割合となっている。一方、「子どもがいない」「子どもに継ぐ意思がない」「適当な後継者が見つからない」を合わせた後継者難による廃業も、29・0%見られた。
○そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない理由について詳しく見ると、「経営者個人の感性・個性が欠かせない事業だから」(27・2%)、「自分の趣味で始めた事業だから」(20・6%)、「高度な技術・技能が求められる事業だから」(17・7%)など、経営者の属人的な資源や能力に関連する理由を回答する企業の割合が高い。
○「廃業予定企業」の廃業予定年齢を見ると、「80歳以上」が18・8%、「75~79歳」が30・0%、「70~74歳」が25・6%で、70歳以上が7割を超えている。
詳細は、https://www.jfc.go.jp/n/news/を参照。