「所得税などの確定申告」及び「源泉徴収事務」「法定調書作成事務」作業の時期を迎える。特集では、「所得税などの確定申告時における留意事項」と行政機関で環境整備が進んでいる「法人番号の利活用」について、国税庁の特別寄稿を紹介する。
1.申告書の作成に当たって
⑴配偶者控除の制度が変わりました
平成30年分から、申告する方の合計所得金額が1000万円を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることができないこととなりました。
また、配偶者特別控除の適用対象となる配偶者の合計所得金額の上限が123万円に引き上げられました。(改正前:76万円未満)【資料1】
⑵医療費控除の制度が変わっています
平成29年分の確定申告から、医療費控除の適用を受ける場合は医療費の領収書の提出に代えて、医療費の領収書に基づいて作成する「医療費控除の明細書」(集計表)を添付していただくこととなっています。
医療費の領収書については、確定申告期限などから5年間自宅などで保管していただく必要があります。
⑶ふるさと納税の金額の記載漏れにご注意ください
ふるさと納税ワンストップ特例の適用に関する申請書を提出している方であっても、確定申告を行う場合には、全てのふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含める必要がありますのでご注意ください。
⑷予定納税の記載漏れにご注意ください
「所得税等の確定申告書」に予定納税額の記載漏れによる申告誤りが数多く見受けられます。予定納税額がある方は、記載漏れがないようご注意ください。
予定納税額は、税務署から送付された「平成30年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」に記載されています。
⑸確定申告書にはマイナンバーの記載が必要です
「所得税等の確定申告書」には、申告者ご本人のマイナンバーのほか、控除対象配偶者、扶養親族及び事業専従者などのマイナンバーの記載が必要です。
2.申告書の提出に当たって
マイナンバーを記載した「所得税等の確定申告書」を税務署へ提出する際は、毎回、申告者ご本人の本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。
この場合、配偶者(特別)控除の適用を受ける配偶者、扶養親族、事業専従者の本人確認書類の提示または写しの添付は不要です。【資料2】
3.電子申告(e-Tax)がより便利に
⑴平成31年1月からe-Taxの利用手続きがより便利になります
現在、e-Taxを利用するには、①お住まいの市区町村から取得するマイナンバーカードとICカードリーダライタを準備し、②電子申告・納税等開始届出書(e-Taxの開始届出書)を提出し、税務署長から通知された利用者識別番号・暗証番号(以下「e-TaxのID・パスワード」といいます)を取得することが必要です(現行方式)。
平成31年1月から、個人納税者の方は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の利用が可能となります。【資料3】
「マイナンバーカード方式」とは、マイナンバーカードを読み取るだけで、e-Taxのログインや申告書の送信などが可能となる方式です。この方式を利用すれば、e-TaxのIDとパスワードを取得・管理する手間がなくなります。
「マイナンバーカード方式」の利用の開始手続きは、オンラインのみで可能であり、①既にe-Taxを利用している方は、e-Taxにログインする画面でマイナンバーカードを読み込ませ、現在利用中のe-TaxのID・パスワードを登録することにより利用可能となり、②初めてe-Taxを利用する方は、e-Taxにログインする画面でマイナンバーカードを読み込ませ、職業などの基本情報を入力することにより利用可能となります。
「ID・パスワード方式」とは、税務署で職員との対面による本人確認に基づいて税務署長が通知したe-TaxのID・パスワードのみで「確定申告書等作成コーナー」から申告書などの送信が可能となる方式です。
⑵スマホで確定申告
年末調整済みの給与所得者の方で、医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除を適用して還付申告をされる方向けに、「確定申告書等作成コーナー」のスマートフォン専用画面を用意します。「ID・パスワード方式」と併せて利用すれば、スマートフォンで申告書を作成してe-Taxで送信することで確定申告が完結することになります。
「ID・パスワード方式」をご利用できない方は、ご自宅のプリンタやコンビニなどのプリントサービス(有料)を利用の上、申告書を印刷し、税務署に郵送などで提出できます。
なお、給与を2カ所以上から受けている方や年金所得者の方は、スマートフォンを利用する場合であっても、スマートフォン専用画面をご利用いただくことはできませんが、パソコンと同様の画面で申告書を作成することができます。
⑶メッセージボックスのセキュリティー強化
個人納税者の方がe-Taxのメッセージボックスを閲覧する場合には、セキュリティー対策の観点から、平成31年1月以降、原則としてマイナンバーカードなどの電子証明書が必要になります。
電子証明書が無くても手続可能な①所得税徴収高計算書の提出、②納付情報登録依頼、③納税証明書の交付請求(税務署窓口での交付分)の三つの手続きについては、引き続き電子証明書がなくても閲覧できますが、それ以外の手続きの受信通知などを閲覧する場合は電子証明書が必要となりますのでご注意ください。
なお、電子証明書を保有していない個人納税者が税理士に申告書の代理送信を依頼している場合などには、毎年1月にメッセージボックスに格納される「所得税等、消費税及び贈与税の申告について」(以下「申告のお知らせ」といいます)が閲覧できず、予定納税額などを確認できないことから、申告義務の履行に支障が出る場合があると考えられます。
そこで、平成31年1月以降、個人納税者本人のメッセージボックスに格納される「申告のお知らせ」を、納税者が指定する税理士のメッセージボックスに転送することを設定(以下「転送設定」といいます)できる機能を実装します。
転送設定は、まず納税者が自身のe-TaxのID・パスワードを使ってe-Taxにログインし、転送先に指定したい税理士のe-TaxのIDなどを入力していただいた上で、税理士が自身のe-TaxのID・パスワードでe-Taxにログインし、それを承認することで設定できます。
お知らせ 法人番号の利活用推進に向けた取り組み
法人番号はマイナンバーと異なり、利用範囲に制限はなく、社会的なインフラとして官民を通じて幅広く利活用されることで、事務の効率化・高度化にも寄与し、社会全体のコスト削減にもつながることから、政府全体として、利活用促進に取り組んでおります。
⑴国税庁法人番号公表サイトについて
法人番号公表サイトでは、法人名及び所在地などから、法人の基本3情報(法人名、所在地、法人番号)のほか、法人名・所在地の変更履歴や閉鎖情報を検索・閲覧することができます。【資料4】
また、法人からの申し込みに基づき、法人名・所在地などの英語表記を公表するとともに、本年4月から順次、法務局に商業・法人登記の申請などを行った際に記載した法人名のフリガナ情報の公表も開始しております。
これらの情報は、サイト上における検索・閲覧機能のほか、データダウンロード機能、Web-API機能により、利用者のニーズに応じた形で提供しています。
当該機能を活用することで、ウェブサイトや業務システムにおいて、法人番号の入力により、法人名・所在地などの情報を自動的に補完入力する機能を追加することができ、誤入力や表記のゆれが解消されるほか、入力作業の効率化も可能です。また、ダウンロードデータを加工すれば、特定の地域に新規設立された法人などのリストも簡単に作成でき、新規顧客開拓にも利用できます。
⑵法人インフォメーションについて
法人インフォメーションとは法人番号をキーに、経済産業省が政府保有の法人活動情報(調達、表彰、補助金など)を集約し、インターネット上で公開・運用しているサイト(https://hojin-info.go.jp)です。
当サイトでは、法人番号や法人名から特定の法人活動情報を検索でき、所在地や営業項目などの属性からも法人を抽出することができます。
活用例としては、契約相手となる法人について、国からの受託実績や表彰情報などを確認し、信用調査の補完を行うことや、国からの事業受託実績により、法人の業務分野や得意分野を把握し、自社との連携可能性のある法人を抽出することなどが挙げられます。
また、API機能も提供しており、この機能を利用して、当サイトの法人活動情報と民間が保有する企業情報を、法人番号をキーに連携することで、より付加価値の高い法人情報を提供するサービスも開始されております。
当サイトの掲載情報は順次追加されますので、法人検索での利用のほか、API機能による情報連携など、ビジネスへの活用なども図ってみてください。
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