わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、価格交渉力の強化に向けて、どのような取引行為が親事業者の法令違反に該当するおそれがあるのかなどについて解説します。今回は「発注者の都合による受領拒否」についてご紹介します。
発注者の都合で受領拒否された場合の対応は?
発注者が正当な理由なく受領を拒否したり返品したりすることなどにより、受注者の利益を不当に害することは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)や独占禁止法に違反するおそれがあります。
【チェックポイント】
□発注者の受け入れ態勢が整わないことを理由に、納期どおり持ち込んだ商品を持ち帰るよう要求されたり、納期より遅く納品するよう指示されたりしていませんか。
□他の事業者には販売できないプライベートブランド商品が返品されていませんか。
□発注者による月末や期末の在庫調整のため、一旦納品を断られたり返品されたりしていませんか。
□単に発注者の取引先から返品されたことを理由に返品されていませんか。
【相談事例】
Q.下請事業者A社は取引先B社から精密機器金属部品の製造を請け負っています。B社は自社の取引先から納品延期を求められたことなどを理由に、あらかじめ定められた納期にA社が納品した当該部品を受領しませんでした。B社のこのような行為は下請法上問題となるでしょうか。
A.発注書面の納期指示に従い納品があった場合、親事業者が受領を拒むことは認められません。注文と異なるものや瑕疵(かし)のあるものが納品された場合など、下請事業者に責任があれば親事業者は受領を拒否することができます。当該設問は親事業者側の都合によるものであり、納期どおりに納品された製品を受領しないことは、下請法上、受領拒否に該当するおそれがあります。設問の場合に限らず、下請事業者が既に製造している物品について、親事業者の都合であらかじめ定めた納期を延期せざるを得ない場合も考えられます。基本的には下請事業者に責任がない限り受領拒否は認められませんが、親事業者がどうしても受領できないような事情があるのであれば、最低限下請事業者と十分協議を行い、了解を得た後、保管費用などにかかる追加費用を全額負担した上で必要な最短期間で受領するようにしてください。なお、協議に際しては、「日時」「担当者(自社・取引先双方)」「方法(対面・電話など)」「交渉経緯」などを書面(議事録など)に残すように心掛けましょう。
発注者が正当な理由なく受領を拒否したり返品したりすることなどにより、受注者の利益を不当に害することは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)や独占禁止法に違反するおそれがあります。
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