わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、価格交渉力の強化に向けて、どのような取引行為が親事業者の法令違反に該当するおそれがあるのかなどについて解説します。今回は「従業員派遣や自社商品購入の強要」についてご紹介します。
従業員派遣や自社商品購入を強要された場合の対応は?
発注者が受注者に従業員を派遣させたり、受注者との取引にかかる商品以外の商品や役務を購入させたりすることなどにより受注者の利益を不当に害することは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)や独占禁止法に違反するおそれがあります。
【チェックポイント】
□発注者が派遣費用を負担することなく自社(受注者)の従業員を発注者側に派遣させ、発注者の利益にしかならない業務を受託していませんか。
□取引に影響力のある発注者側の担当者から、自社との取引と関係のない発注者の商品などの購入、利用を要請されていませんか。
【相談事例】
Q.大規模小売業者である親事業者は、自らが貨物自動車運送事業を営み、顧客から商品の配送を請け負っていますが、配送を委託している下請事業者に対して自社店舗の営業の手伝いのために従業員を派遣させていました。また、下請事業者は、親事業者の取引先からイベントの入場券の購入も要請されています。親事業者のこのような行為は下請法上問題となるでしょうか。
A.発注書面に規定された給付内容以外の追加作業を下請事業者に無償で要請することは、不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがあります。また、下請事業者へのイベントの入場券の購入要請については、親事業者が外注担当者などの取引に影響を及ぼす者を通じて下請事業者に購入を要請する場合は、購入・利用強制に該当するおそれがあります。親事業者が下請事業者に従業員の派遣を要請する際は、適正な対価を含む派遣の条件を提示し、下請事業者に任意に判断させる必要があります。下請事業者も取引と関係のない製品やサービスの購入に関する親事業者からの要請には、可能な限り応じないようにすることが肝要です。なお、派遣の条件などの協議に際しては、「日時」「担当者(自社・取引先双方)」「方法(対面・電話など)」「交渉経緯」などを書面(議事録など)に残すように心掛けましょう。(了)
提供
公益財団法人 全国中小企業振興機関協会
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営するなど、中小企業支援機関として各種事業を実施しています。http://www.zenkyo.or.jp
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