このほど観光庁は、2018年11月~19年1月にかけてわが国を訪れた外国人旅行者を対象に、旅行中に困ったことや受け入れ環境(多言語対応、通信環境、公共交通など)へのニーズ、満足度などに係るアンケート調査を実施した。今回の調査では、前回調査(17年度)、前々回調査(16年度)で「困った」という回答が比較的多かった「公共交通の利用」に関して詳細に聞いた。なお、本アンケートは訪日外国人旅行者の利用が多い成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、福岡空港の4カ所で行い、合計で4037件の回答を得た。特集では、同アンケート調査の概要を紹介する。
回答者の属性(性別、年齢、国籍、日本への渡航回数)
〇20代が最も多く、20代・30代で回答者の7割を占める。
〇国・地域は、訪日5大市場(韓国、中国、米国、台湾、香港)で各400以上、インドネシア・タイ・マレーシアの3カ国で計600以上の回答を回収した。
〇6割以上が訪日経験2回以上のリピーターである。
調査結果1‐1
旅行中に困ったこと(3カ年比較)
〇2018年度調査では、ほぼ全ての項目で改善が見られ、「困ったことはなかった」も36・6%となった。
〇「施設などのスタッフとのコミュニケーションがとれない」が最も多く20・6%となり、「無料公衆無線LAN環境」「公共交通の利用」「多言語表示の少なさ・分かりにくさ」の順で続いた。
〇17年度と18年度を比較すると、「その他決済手段(モバイルペイメントなど)」の困った比率が唯一増加した。(図1)
調査結果1‐2
旅行中に困ったこと(訪日回数別)
〇「公共交通の利用」「施設などのスタッフとのコミュニケーションがとれない」「多言語表示の少なさ・分かりにくさ」などについては、訪日回数が多い人ほど困らない傾向となった。(図2)
調査結果1‐3
旅行中に困ったこと(困った場所)
〇「旅行中に困ったこと」の主な選択肢を八つ取り上げ、それについて困った場所を尋ねたところ、いずれも主に観光地・公共交通機関での対策のニーズが高い結果となった。(図3)
調査結果2‐1
旅行中に利用した公共交通機関
〇今回の旅行中に利用した公共交通機関を尋ねたところ、最も利用割合が高かったのは在来線(新幹線以外の鉄道)で76・1%、次にバスで55・5%となった。(図4)
〇国別に見ると、台湾および韓国の旅行客は、他国の旅行者よりもバスの利用率が比較的高い。また韓国および欧米豪の旅行客は、タクシーの利用率が他国の旅行者よりも比較的高い。
調査結果2‐2
利用した際に困った公共交通機関
〇利用者に対して困った公共交通機関を尋ねたところ、最も困った割合が高かったのは在来線(新幹線以外の鉄道)で22・7%、次にバスで20・7%となった。(図5)
調査結果2‐3
利用した公共交通機関で困った理由
〇困った利用者が比較的多かった新幹線・在来線、バス、タクシーについて困った理由を尋ねたところ、新幹線・在来線では「構内、乗り場、車内の利用」が36・6%、「駅での切符、ICカード購入」が21・6%、「ルート検索」が20・6%、「切符の予約」が14・9%という順になった。
〇それぞれの困った理由の中身を見ていくと、「ルート検索」では、「多言語対応したルート検索用のウェブサイト・アプリがなかった」という声がほとんどであった。
〇「構内、乗り場、車内の利用」では、「どの列車に乗ればよいか分からなかった」「乗る列車の乗り場が見つからなかった」「乗り場の案内、放送が理解できなかった」という回答が上位となった。
〇「駅での切符、ICカード購入」では、「スタッフとのコミュニケーションがとれなかった」「券売機で言語表示が少なく、切符の購入方法が分からなかった」という回答が多かった。
〇「切符の予約」では、「切符の予約ウェブサイト・アプリを探したが見つからなかった/自分が分かる言語で書かれていなかった」という回答が多かった。
〇バスは「構内、乗り場、車内の利用」が43・2%、「ルート検索」が24・3%、「駅での切符、ICカード購入」が16・4%、「切符の予約」が9・7%の順となり、新幹線・在来線とほぼ同じ傾向となった。
〇それぞれの困った理由の中身についても、前述の新幹線・在来線と同じ傾向であった。
〇タクシーでの乗車中に生じた困ったことは「移動前の目的地の指定および移動中のトラブル対応がうまくできなかった」という回答が多かった。また、乗車前の困ったことは「タクシーが捕まらなかった/捕まえるのに時間がかかった」との回答が多かった。配車時に困ったことは「配車できるウェブサイトやアプリを探したが見つからなかった」という回答が多かった。
調査結果2‐4
使用したかった決済手段と実際使用した決済手段
〇新幹線・在来線、バス・タクシーを利用した人に対して、チケット・切符の購入時に使用したかった決済手段と実際の決済手段を尋ねたところ、いずれの交通機関でも、現金以外の決済手段を望んだものの、最終的には現金で支払った人が一定数いることが伺える結果となった。
〇バスでは、クレジットカード払いを希望していた人の割合が20・6%いたにもかかわらず、実際は11・1%しかクレジット払いができなかった。一方で、現金支払いを希望していた人の割合は65・0%であったが、実際は81・4%の人が現金払いしたと回答した。
〇タクシーについても、バスとほぼ同じ傾向が見られ、クレジット払いをしたくてもできずに、現金払いした旅行者が多かった。
〇各交通機関とも、I Cカード(タッチでGO含む)やモバイルペイメント(例:モバイルSuicaなど)での決済を望む旅行者、実際に支払った旅行者は5%程度とまだまだ少ない。
調査結果3
公共交通機関の改善度合い
〇訪日旅行が2回目以上の外国人に対して、公共交通機関の状況が前回の訪日時と比べ改善しているかどうかを尋ねたところ、前回訪日時からの間隔が長くなるほど「大きく改善している」の回答が多い傾向となった。(図6)
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