投資教育実施の努力義務
今回は、企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)を導入する事業主に努力義務として課される従業員への「投資教育の継続的な実施」について、概要や実施の流れなどを解説します。
企業型DCは、事業主が拠出した掛け金について、加入者が自己責任により資産運用を行い、その結果に基づいて老後に給付を受け取る制度である。
加入者が自身のライフプランを踏まえて自己責任で資産運用を行うには、その基礎知識や老後の生活設計などに関する投資教育が不可欠。投資教育の継続的実施は、企業型DCの導入事業主に「努力義務」として課され、厚生労働省への実施状況の報告が必要だ。
投資教育は、事業主自らが実施するか、運営管理機関や投資教育会社、企業年金連合会に委託して実施する。
投資教育の実施の流れ
①加入者の投資実態の把握
事業主はまず、業務委託先の運営管理機関から提供される報告書など各種データを活用し、加入者の投資実態を把握する。例えば、「投資信託と元本確保型商品(定期預金など)への投資割合」「元本確保型商品のみで運用する者の割合」「運用利回りの分布」などに着目し、長期的な資産運用を前提として分散投資効果が得られるよう運用されているかを確認。また、コールセンターや加入者ウェブサイトの利用状況、資産配分の変更手続きの実施状況なども把握する。
②目的を設定し教育内容を検討
その上で課題を整理し、「基本の復習」「投資意欲の向上」など目的(テーマ)を設定し、教育内容を検討する。その際、応用的な内容よりも、まずは基本的な内容とする方が加入者の満足度を高められるだろう。
③実施方法や委託先などを検討
実施方法は集合研修に限らず、就業形態などに応じて、eラーニング、社内報やメルマガ、冊子の配布など柔軟に検討する。集合研修の場合、対象範囲や研修の開始時間などを考慮する。
④効果の確認
実施後には加入者からアンケートを取り、理解度などを把握したい。
加入者ウェブサイトのアクセス数、資産配分の変更手続きの状況の変化など各種データから効果を測定し、次回以降の投資教育に生かす。
企業年金連合会では投資教育の継続的な実施を支援するため、事業主からの委託を受ける「継続投資教育事業」を実施しています。また、継続的に教育を実践している企業30社の事例などを紹介した「継続教育実践ハンドブック」をウェブサイト上で公開しています。詳細は左表に記載されているQRコードにアクセスしてください。 (日本商工会議所企画調査部) =おわり
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