各地商工会議所は、地元小学校の夏休み期間に合わせ、小学生らを対象に職業体験や自然体験、企業見学などの事業を実施した。
いずれの事業も会員企業の協力の下、地域活性化、企業・店舗などの認知度向上、まちなかのにぎわい創出、郷土愛の醸成などを目的としたものだ。参加した小学生らからは「ものづくりの素晴らしさが分かった」「楽しかった。来年も参加したい」などの声が寄せられ好評を博した。特集では、6商工会議所の取り組みを紹介する。
ものづくりに興味津々
恵庭(北海道)
恵庭商工会議所は8月7日、「えにわ工場見学ツアー」を開催。市内小学校に通う3年生以上の児童とその保護者12組24人が参加し、業種が異なる3工場を訪問した。
1社目は、かまぼこやちくわなどの水産ねり製品を製造・販売している1924年創業の堀川。同社では、かまぼこなどの製造工程を見学した後、出来たてのごぼう天などを試食した。さらにお土産もいただき、興味に加えておなかも満たされる内容となった。
2社目は、1909年に日本で初めて段ボール事業を始めたレンゴー。段ボールの歴史を学んだ後、製造ラインを見学した。すごい速さで出来上がる段ボールに参加者一同、圧倒されながらも「段ボールベッドは体重何キロまで大丈夫か」「工場の室温が高いのはなぜか」などの質問が同社担当者に寄せられるなど積極性が目立った。
3社目は、北海道産の木材や自然塗料などを採用し、人や環境にやさしい製品づくりをしている岡田建具製作所。木製ドア製造工程の見学と木工製作体験を行った。製作体験では、一人一人小物入れを、またグループに分かれてスツール(椅子)を製作した。
同所担当者は「市民への会員企業の知名度向上という目的は達成できたと思う。次年度以降も新規受け入れ先の開拓を心掛け、継続していきたい」と意気込みを語った。
まち歩きで地域学ぶ
高岡(富山県)
高岡商工会議所は市内小学校の夏休み期間に合わせ、同市出身でドラえもんの作者である藤子・F・不二雄先生ゆかりの地を訪問する「藤子・F・不二雄先生のふるさと高岡GO!GO!スタンプラリー2019夏」を昨年に続き開催した。F先生を通じて高岡市について学び、郷土愛を育み、まちなかのにぎわいの維持・向上を目的とした事業だ。
メイン企画は「スタンプラリー&隠されたキーワードを探せ」。F先生にゆかりのある四つのエリア(「あそべる(おとぎの森)」「まなべる(高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー、市立博物館や高岡古城公園)」「あえる(高岡駅周辺)」「のれる(ドラえもんトラム)」)を、スタンプラリーで巡るほか、同エリア内に隠された四つの文字を探し出すというもの。
また4エリア内に設置されたQRコードをスマホで読み取ると、F先生が幼少期を過ごした昭和時代の高岡市の風景を見ることができる「スマホで発見!藤子・F・不二雄先生の過ごした昭和の時代を見てみよう!」というモバイル企画も同時開催した。
同イベントには期間中、児童や保護者ら約900人が参加、「高岡を知る、来るきっかけになった」「ドラえもんスポットがたくさんあり見応えがあった」などの声が寄せられ、笑顔でまちを歩きながら地域のことを学ぶ親子の姿が見られた。
目を輝かせ作業体験
草加(埼玉県)
草加商工会議所は、市内小学校の協力の下、3年生以上の児童を対象に「草加モノづくり探検隊」を、7月24日から8月6日までの間で5回(5日)に分けて実施した。設定されたものづくり体験7コースと農作物収穫体験3コースの計10コースを、1日2コース(午前と午後)ずつ行った。
同事業は、市内の特徴あるものづくり事業所の製造現場の見学や作業体験、農作物収穫体験を通じて、ものづくり事業所や農業事業者と、そこで生産される製品や作物などを幅広く知ってもらい、「ものづくり」の素晴らしさを感じてもらうことと、将来の「ものづくり」を担う人材を育成することなどを目的に、平成18年度から毎年度実施している。
本事業開始当初は見学中心の1日コースが主であったが、参加児童が途中で疲れたり、飽きたりする姿が見受けられたことから、事業者の協力により、見学のほか、作業体験などを含んだ内容に変更。また、時間も1日コースから半日コースに短縮し、参加しやすい環境を整えた。
今回は、小学生147人と保護者ら117人の合計264人が参加。参加した児童らは、それぞれに目を輝かせ「草加でも世界に誇る素晴らしい製品が作られていることを知った」「野菜の収穫体験が楽しかった」など、好奇心をくすぐる内容に満足した様子だった。
商店の魅力伝える
三島(静岡県)
三島商工会議所は、商店(個店)への来店客数が減少する中、商店の認知度アップを図り、さらなる魅力を伝えることを目的として、三島市内の小学校の夏休み期間中に「みしまなりわい体験塾」を開講。全26講座に503人が参加した。
三島には、古い店から新しい店まで、面白くて楽しい店がたくさんあることから、同所では7年前より、主に小学生を対象に「ひやかし歓迎商店街事業三島のお店と名所丸ごと再発見ツアー」としてお店見学ツアーを実施してきた。その後(4年前に)、「見学型」から「体験型」へ変更し、今年5年目を迎えた。
今回は会員事業者の協力の下、プログラミングや接客体験のほか、農業、ホテル、郵便局、金融機関などの業務体験、枕や木製スプーンなどのモノづくり体験などの講座を開講。行商体験の参加者からは「とても楽しかった。毎年参加したい」、自分に合う枕づくり講座では「ぐっすり眠ることができそうな枕がつくれた」という声がそれぞれ聞かれた。また、人気の高かったイタリアンレストランでのスイーツづくり講座では「難しかったけど、とても楽しかった、家でつくってみたい」という感想が寄せられた。
同所では「次世代を担う子どもたちに商店の仕事を体験してもらい、その魅力を伝えるため、来年度も実施していく」としている。
多彩なプログラムに笑顔
大阪(大阪府)
大阪商工会議所南支部は8月24~25日の2日間、「あべの天王寺・サマーキャンパス2019」を実施した。本事業は、あべの・天王寺エリア全体を「キャンパス」に見立て、親子で楽しめる体験プログラムなどを通じて、地域活性化や店舗の集客強化などを目的に2014年からスタート。今年で6回目を迎えた。
当日は、地元企業・店舗などが、幼児・小学生向けの職業体験やものづくりなど、親子で楽しめる81ものプログラムを用意。子どもたちは参加企業・店舗が記載されたガイドブックを片手に気になる企業・店舗を訪問し、それぞれのプログラムを楽しんだ。
また、今回は「百舌鳥・古市古墳群」の世界遺産登録を記念して、古墳とその周辺を走る鉄道のジオラマ展示やスタンプラリーを実施。25日には、ラグビートップリーグ「近鉄ライナーズ」の選手たちによるラグビー体験などのステージプログラムも行われた。
企業・店舗からは、「子どもたちの笑顔を見ることができた」「いつもと違う親子連れのお客さまがたくさん来てくれた」、参加親子からは「夏休みの日記に書く思い出ができた」「宿題の工作ができた」などの声が寄せられた。体験プログラム参加者や店舗利用客などを対象としたガラポン抽選会の参加者は延べ8000人を超え、大盛況の事業となった。
地元の自然を再発見
阿南(徳島県)
阿南商工会議所青年部は8月4日、「親子で冒険‼シーカヤック&SUP」を実施した。当日は晴天に恵まれ、波も風も穏やかな最高のコンディションの下、親子80人が参加し、阿南の青い海を満喫した。
同事業は、親子共通の体験を通して、親子の絆を深め、地元(徳島県阿南市)の豊かな自然を再認識してもらいたい、そして、次世代を担う子どもたちが「阿南に生まれてよかった」、また一度地元を離れても「阿南に帰ってきたい」と思ってもらうことを目的としたもの。「地域の魅力再発見」や「若者定住促進」など、将来にわたり地域の活性化につなげていく事業として2004年にスタートして、今回で16回目となった。
当日の運営は、徳島県鳴門市でシーカヤックツアーなどの実施に実績があり、鳴門商工会議所青年部OBでもある、HORIZON(ホライゾン)に依頼。同代表の尾崎志郎氏など4人のインストラクターがシーカヤックとSUPのこぎ方などを丁寧に指導して、事故なく安心安全に楽しめるよう万全を期した。5グループに分かれた参加者は、1グループずつ約1時間、海風を感じながら広大な海を冒険した。
参加者からは「景色がきれいだった」「ぜひ友人知人にも勧めたい」「来年もぜひ参加したい」などのうれしい声が寄せられ、好評を博した。
最新号を紙面で読める!