土田 和歌子 (つちだ・わかこ)
1974年東京都生まれ。八千代工業所属
※パラリンピック7大会(冬2、夏5)でメダル7個(金3、銀3、銅1)獲得
土田和歌子45歳。競技歴26年。パラリンピックは1994年リレハンメル冬季大会から2016年夏のリオ大会まで7大会に出場し、メダル7個を獲得。日本人選手で唯一、夏冬両大会での金メダリストでもある。
出場が決まれば8度目となる東京パラリンピックに向け、前人未到の挑戦を自らに課す。一人で3種目(スイム、バイク、ラン)を行うトライアスロンと、42・195㎞で競うマラソンの「二刀流」での出場を目指しているのだ。過酷さでは双璧といえる2競技に挑む原動力は、「自分の可能性を信じ、世界のてっぺんを狙いたい」というアスリートとしての性(さが)だ。
高校2年のとき、交通事故で車いす生活となったが、リハビリで出会ったスポーツに希望を見いだした。最初は氷上競技のアイススレッジスピードレースで世界の頂点に立ち、陸上競技転向後は、トラック5000mで金。マラソンでも世界のメジャー大会で優勝を重ね、世界記録も2度塗り替えた。
だが、順風満帆だったわけではない。08年北京大会では連覇狙いの5000mで他選手の転倒に巻き込まれて重傷を負い、マラソンは無念の棄権。マラソンに専念した12年ロンドンは自身の転倒で5位。16年リオは快走しながらも1秒差の4位。それでも、「出し切るレースはできた。悔いはありません」と前を向いた。
その後すぐに、運動性喘息(ぜんそく)を発症。治療で水泳を始め、トライアスロンへの挑戦欲が湧き、18年1月には完全転向を宣言。退路を断った懸命の努力が実り、国内外の大会で表彰台の常連にもなったが、19年夏、衝撃が走る。公平な競技のために行われる「クラス分け」の再審査の結果、軽いクラスに変更され、より厳しい条件での戦いを強いられることになったのだ。
その秋、「トライアスロンを通じて体や技術の進化を感じたから」とマラソンへの再挑戦を表明。
どんな試練にも、逃げない姿勢が真骨頂だ。輝かしい実績の陰には、基礎体力の増強、技術の習得、フォームの改善、試合勘や駆け引きの強化など地道な努力の積み重ねがある。
生まれ故郷の東京で開かれる世界最高峰の舞台を、「本当に、本当の集大成」と見据える。そんな彼女の輝く笑顔を楽しみに待ちたい。
※土田選手が所属する八千代工業については、本誌2019年8月号の特集1で紹介しています。
トライアスロン
泳ぎ、こぎ、走り、自然環境や天候とも戦いながら、自己の可能性に挑む
スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(長距離走)の3種目を連続して行い、合計タイムで順位を競う。肢体不自由(座位/立位)、視覚障害を対象とし、各障害に応じた用具を使い、必要なサポートを受けて競技する。
競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/triathlon/
観に行こう!2020ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会
日程:2020年5月16日(土)〜17日(日)
会場:横浜市山下公園周辺(神奈川県横浜市) 観戦無料
*変更の可能性あり。大会公式サイトを要確認
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