日本商工会議所は3月17日、「知的財産政策に関する意見」を取りまとめた。同意見は、中小企業のニーズや実態を踏まえ、知的財産(知財)政策の目指すべき方向性や施策をまとめたもの。知財の創造・活用をより一層加速させるとともに、知財保護の強化や知財の公正な取引を推進するよう、政府の知的財産戦略本部や特許庁など関係先に要望事項の実現を働き掛けた。
知的財産は、中小企業にとって自社の付加価値の向上やブランドの確立に貢献する競争力の源泉である。人材・研究開発投資の成果であると同時に、次の投資に向けた収益を生み出すための貴重な経営資源でもある。
しかしながら、わが国では、知財の創造・活用が十分に進んでいるとは言い難い。世界全体の特許出願件数は、中国を中心に高い伸び率の一方、日本は10年前と比べてマイナス20%と漸減傾向にあり、その勢いを欠いている。研究開発費や論文の被引用件数においても、米国や中国に大きく水をあけられている。
このような状況であることから、同意見書では、1.知財取引の適正化を、2.模倣品、海賊版への断固たる取り締まりを、3.中小企業の知財創造・活用の促進を、4.知財金融や税制を活用した中小企業の知財創造・活用の後押しを、5.知財による地域中小企業の競争力強化を、6.日本のコンテンツの市場規模の拡大を、7.知財紛争における紛争処理能力の強化をの七つを柱に掲げている。
知財の創造・活用の促進には、中小企業の実態に即した支援策を展開することや、知財権の取得・維持の負担を軽減してハードルを引き下げることに加え、中小企業の経営者が、知財権の取得によるインセンティブを実感できるようにすることが極めて重要である。また、知財の保護強化や公正な取引推進、さらに地方創生を進めるためには、地域中小企業の競争力強化が極めて有効としている。
具体的には、下請代金支払遅延等防止法第4条の親事業者の禁止行為に「不当な知財取引」を追加することや、独占禁止法(優越的地位の濫用)のガイドラインの拡充などを要望。そのほか、中小企業が地域資源の活用や国際市場への展開に積極的に取り組むことができる知財環境の整備や、中小企業の知財経営を担う人材の育成を後押しすることなどを求めている。
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