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コラム石垣 2018年9月1日号 丁野朗

本年6月、新たな「観光ビジョン実現プログラム」が発表された。2016年3月の「明日の日本を支える観光ビジョン」展開のための具体的プログラムである。もともとのビジョンが、「3つの戦略と10の重点施策」を骨格としているので、その枠にとどまり、やや新鮮味に欠けるきらいは否めない。しかし、何よりも大切なことは、これらの施策を担う人材が地域に育っているかどうかである。

▼プログラムを担うのは、まぎれもなく地域であり民間事業者である。国は地方創生施策に多額の助成金を準備しているが、厳しい地方財政の中、手を挙げる自治体は多くない。加えて観光に直接携わる観光関連サービス業は、今や深刻な人手不足に悩んでいる。一部には「人手不足倒産」といった笑えぬ現実もある。政府は目標を急ぐあまり、こうした地域の実態を見失うことがあってはいけない。持続的な事業を担うのは、地域のヒト、それも民間事業者である。ここが委縮し育っていないと結局は空回りに陥ってしまう。

▼近年、各地で地域人材育成のセミナーなども盛んである。しかし、その多くは1度限りの単発、座学中心のプログラムである。大切なことは、自らが事業を構想し、その実現のためのプログラムを描き実践する継続的な人材の育成である。行政各課や経済団体などの横串と協働の体制づくりも大切である。観光や地域創生は、まさに地域の総合力が試されるのである。

▼地域の再生・創生には、時間はかかるが、これらを担う人材の存在と育成が不可欠である。いずれも単年度のKPIに振り回されることなく、長期を視野に入れた人づくりが喫緊の課題であろう。人は石垣。まさに本コラムのテーマである。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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