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コラム石垣 2018年9月11日号 中村恒夫

「優秀なビジネスマンは、新しいポストに就いた日から後任への引き継ぎ準備をする」と著名な財界人から聞いたことがある。日常業務で気付いた問題点や改善テーマを整理しておけば、それを読んだ後任には貴重な『参考書』になる。「人は変わっても仕事は継続しなくてはいけない」と経営者として成功を収めた人らしく、自信満々に言い切っていた。

▼事業承継に悩む中小企業の経営者にとっては、引き継ぎよりも後継者の確保が重要な問題だろう。ただ株式の大半をトップが握るオーナー企業であれば、個人資産の継承をどうすべきか、入念に検討する必要がある。

▼最近の民法改正で、相続を巡る制度の大幅変更があった。配偶者の優遇措置が盛り込まれた点は承知している経営者も多いはずだ。事業承継関連では遺留分制度の見直しがポイント。従来、遺言内容に不満な相続人が、遺留分を請求し、例えば会社の土地や建物が共有状態になる事例もあった。そうなれば増改築も自由にできず、会社の発展を阻む恐れがある。今回の改正では、請求で生じる権利が金銭債権となったため、不動産の有効活用がより容易になる。相続法に詳しい和田倉門法律事務所の内田久美子弁護士は「事業承継への効果」を評価している。

▼忘れていけないのは株式の扱いだ。制度変更に関係なく、遺言で相続人を指名しないと、株式は共有状態となり、議決権の行使が不可能になりかねない。働き盛りで元気な経営者でも病気や事故で急逝するケースはあるのだ。内田弁護士は、後継者の指名などを「あらかじめ準備しておく」用意を推奨している。相続を巡る争いが企業経営に支障を来す事態を、回避することにつながるからだ。

(時事通信社常務取締役・中村恒夫)

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