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コラム石垣 2018年9月21日号 中山文麿

米中間で報復関税の応酬など、貿易戦争が激化してきた。トランプ米大統領がアメリカファーストの保護貿易政策を強行した結果だ。第二次世界大戦後、世界経済は米国が主導する自由貿易によって順調に発展してきたのに残念だ。

▼自由貿易は経済学を学んだ人たちにとって常識的な理論である。英経済学者のリカードの比較優位の原理やISバランス(経常収支は貯蓄マイナス投資に等しい)などによって裏付けられている。つまり、貿易収支は単に二国間だけで見るものでなく、グローバルかつさまざまな経済要素を総合的に判断しなければならないものだ。米ハーバード大学のマンキュー教授も「学問的にとてもトランプ大統領を説得できない」と諦め顔だ。

▼さらに、この貿易戦争に米中の軍事的側面も絡んできた。中国政府が2015年に発表した「中国製造2025」政策がアメリカを著しく刺激した。米国は、この計画は米国の軍事力に対する中国の軍事力の挑戦のための産業基盤づくりと分析している。これまでも、人民解放軍のスパイやサイバー攻撃、それに知的財産権に対する侵害にいら立っていた▼習近平国家主席の国家資本主義とトランプ大統領の大衆迎合資本主義の間に折り合いがつけられるのだろうか。1929年の大恐慌後に世界を襲った関税引き上げ競争はブロック経済を経て、最終的には戦争でもって終息した。

▼今回の貿易戦争は、アメリカの中間選挙を控えたトランプ氏と、終身独裁体制を確立し中華民族の偉大なる復興を唱える習近平氏のいずれも弱みを見せられない似た者同士の戦争だ。この戦争は当面、両国民が自分たちの生活がおびやかされ、苦しめられ、大声を上げるまでは解決しないであろう。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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