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コラム石垣 2018年10月21日号 丁野朗

建築の世界では、リノベーションやコンバージョンの用語を頻繁に耳にする。リノベーションは、既存建物の骨格だけを残す大規模改修工事により、元の用途や機能を変更し性能の向上や価値を高めること。コンバージョンは、古い工場や倉庫などを美術館などに転換再生するといった行為である。

▼こうした発想は、今日の観光の仕組みづくりでも重要である。観光は「装置」であり、一度つくれば簡単には変えられず、顧客の価値変化のたびにミスマッチが生じてしまう。ましてや世界各国から訪れる外国人の価値観にどう応えるかが絶えず問われているのである。

▼そんな中、インバウンド客の増加で絶好調の岐阜県高山市の経営戦略を思い出した。高山は江戸期以来の城下町・商家のまち並みなど、天領の姿をよくとどめている。重要伝統建築物群(重伝建)のまち並みは、平成21年にミシュラン・グリーンガイドで最高の三つ星を獲得、観光地としてのブランドを確立した。

▼しかし高山市の國島市長は高山の未来経営について三つの課題を示した。地域の持続力とこれを支える「なりわい(生業)」の再生、100年先の地域づくりを支える環境の保全、人々の生きざま・暮らしぶりとしての文化力である。市長室の片隅に置かれたバイオリンとチェロは、高山を代表する漆(春慶)が施された見事な作品だが、イタリア・クレモナ市の弦楽器職人と春慶の塗師のコラボ作品である。

▼重伝建の古いまち並み同様、地域の伝統工芸・芸能・食文化などは、リノベーションの発想によって新たな意味・価値が付与されてはじめて「持続力」が担保できる。地域のなりわいの再生や地域を支える環境・景観の保全的リノベーションも同じである。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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