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コラム石垣 2018年10月11日号 宇津井輝史

デンマークのエースストライカーとして活躍したブライアン・ラウドルップは祖国で神様のような存在である。兄のミハイルはかつてJ1のヴィッセル神戸に在籍した。あるときミハイルは、近くの甲子園球場にプロ野球の阪神戦を見に行く。野球の熱狂的人気に、この国でサッカーが根付くのか怪しんだ▼だがここ数年、プロ野球人気の凋落ぶりは野球ファンを嘆かせる。トップ選手が次々と米国に移籍。地上波での試合中継も激減した。日本人が野球競技を好きなのは、投手と打者の一騎打ちという一点にある。一球に賭ける緊張感は武道の伝統に似る。だが野球の本質は別のところにあった。

▼米国で野球競技が確立した20世紀初頭は、独禁法の成立をはじめ規制と改革の時代である。慶大の鈴木透教授によれば、米国をリセットするための資本主義と民主主義の精神が、野球競技の特徴に反映されているという。ルールを見てみよう。代打やリリーフなどゲーム中に次々と人材を投入するのは、多くの人に能力に応じた活躍の場を与えて成果の最大化を図るためだ。

▼サッカーなど多くの競技はスタジアムの広さやゴールの大きさを規格化する。ところが野球は、球場の広さはまちまち、ストライクゾーンも打者の身長によって変わる。個別差を容認するのは近代合理主義とは異なる精神だが、歴史の浅いアメリカはそこに、近代が捨てたものを社会に再接合しようと試みた。

▼人種差別の解消に早くから挑んだのも野球だった。誰にも開かれ、異なる世界を結び付ける野球は、社会を変革する舞台にもなった。野球は、アメリカがどのように国をつくろうとしてきたのかを映す鏡である。アメリカはいま、そういう国柄を失いつつある。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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