日商 Assist Biz

更新

こうしてヒット商品は生まれた! レインボーラムネ

“レインボー”といっても色は4色、味は1種類(ピーチ味)のみだが、袋いっぱいに入った大粒ラムネは見ているだけで幸せな気分になる。希望すれば、写真の有料ギフトボックスを付けてくれる。大は100円、小は8個セットで400円(写真は大)

奈良県生駒市にある小さなラムネ工場、イコマ製菓本舗。同社の看板商品「レインボーラムネ」が今、すごいことになっている。生産数に限りがあるため、年2回のはがきによる抽選販売を行っているが、1回の当選数3500人に対し、なんと10万通以上の申し込みが殺到する状態が続いているのだ。買いたくても買えない、この〝幻のラムネ〟はどのようにして誕生し、現在に至ったのだろうか。

サッカーボールのようなラムネもいいかも

いったい何がそこまで多くの人を魅了するのか。直径2㎝の大きな球状をしていることを除けば、ごく普通のラムネである。白、ピンク、水色、黄色のカラフルな粒が、透明ビニール袋に無造作に入っており、750gで500円。これが今、欲しくても手に入らない「激レア商品」となっているのだ。

つくっているのは生駒市の住宅街にある小さなラムネ工場・イコマ製菓本舗で、売り出したのは平成12年のこと。それまで、同社はキャラクターのラムネ菓子をメーンに製造していた。オリジナルの球状ラムネを思いついたきっかけを、同社社長の平口治さんはこう説明する。

「Jリーグが発足してからというもの、子どものサッカー人気は野球をしのぐ勢いでした。そうした中、テレビでサッカーの試合を観戦していて、ふと『サッカーボールのようなラムネもいいなぁ』と。それで、ちょっとつくってみようかという気になったんです」

ラムネのつくり方は、まず粉砂糖、コーンスターチ、香料、クエン酸などの材料を機械で混ぜ合わせ、大きなふるいにかけてサラサラにする。それを専用の機械で成形して、乾燥させるというのが一般的な工程だ。ところが平口さんが考案したラムネの場合、形がネックとなる。平口さんは最初から球状に成形することにこだわったが、型職人はいい顔をしなかった。

「球状にしたいなら、まず半球をつくって、あとから二つを張り合わせればいい」というのだ。確かにそれでも球状になるが、食感が大きく変わってしまう。双方の意見は平行線のまま、1年が過ぎた。結局、平口さんがある特殊な方法を思いつき、機械を改良したことで球状の成形が可能となり、表面はサクサク、中はしっとり溶けるラムネが完成した。

「どんな名前を付けようかと悩んでいたとき、たまたまテレビのスポーツニュースでゴールシーンのダイジェストをやっていたんです。得点したボールの弧を描くような軌道を、キャスターが『レインボー』と呼んでいるのを耳にして『これだ!』と思い、レインボーラムネと名付けました」

こうして、同商品は工場と地元の二つの菓子店で販売を開始した。

商工会議所への投書からじわじわ火がつく

せっかくのアイデアだったが、発売当初の売れ行きは芳しいものではなかった。手間ひまかけて、ピンクはイチゴ味、黄色はレモン味、と色ごとに味を変えてつくっていたが、近所の子どもたちからは「おっちゃん、味みんな一緒やな」と言われる始末。味そのものの評判も今ひとつだった。

「そこで香料の会社に相談したところ、『今ちょうど新しいピーチの香料があるから』と届けてくれたんです。それを使ったらすごく風味が良くなりました。お客さんにも好評だったので、それからは色にかかわらず、全てピーチ味に統一することにしました」

少しずつではあるが固定ファンが増えてきた平成17年、1枚のはがきが生駒商工会議所に届く。「生駒においしいラムネをつくっているところがあるから取り上げてほしい」というファンからの投書だった。さっそく同所が発行する地域ミニコミ誌『ひょうたんからいこま!』に紹介記事が掲載されると、口コミが広がって遠方からわざわざ買いに来る人も現れた。また、インターネットのブログやSNSなどで話題に取り上げられたことで徐々に知名度が上がり、問い合わせや注文が右肩上がりに増えていった。

「注文に応じて生産量を増やすのが筋ですが、このラムネに限っては私のこだわりの工程があって、そこを従業員に任せることができないため、生産数は1日400袋が精一杯。注文をいただいた方全員にお届けできなくなりました。そのため、昨年9月からはやむなく、年2回のはがきでの抽選販売という形をとることにしたんです」

増産をしないことで人気を保ち続ける

当時、「大人の菓子」ブームの追い風もあり、1回の当選数が3500人なのに対して、申し込みは3万~4万通にも上った。それだけでも大変な倍率だが、次の抽選を控えた今年の1月、バラエティ番組「秘密のケンミンSHOW」で〝幻のラムネ〟と紹介されるや否や申し込みが殺到。その数は14万通にも上り、倍率も40倍に膨れ上がった。

さらに6月、生駒市が年1万円以上の「ふるさと納税」の寄付者に贈る記念品に同商品を加えたところ、前月の137倍となる約1700万円の寄付が集まる事態に。抽選に漏れた人がどうしても手に入れたい一心で寄付したのだろう。

「私はパソコンが苦手なので、インターネット上でレインボーラムネがどのように語られ、盛り上がっているのかよく分かりませんが、手を抜かずにおいしいものをつくっていれば、いつかは必ず売れるということを実感しました。大変ありがたいですし、また、買えなかった人には申し訳ないと思っています。『もっとたくさんつくってよ』という声を多くの方からいただきますが、正直言って増産する気はありません。この人気が永遠に続くわけではないし、今後も6人体制でつくれる分だけつくっていくつもりです」と欲がない。

たとえブームになってもブレることなく、淡々と1日400袋のラムネをつくり続ける平口さん。その地道なものづくりが結果的に希少価値を生み、「どんな味なんだろう」「一度は食べてみたい」という多くの人の興味をかきたてている。今年9月の申し込みも10万通を超えた同商品の人気は、しばらく衰えそうにない。

会社データ

社名:イコマ製菓本舗

住所:奈良県生駒市俵口町1421-2

電話:0743-73-4614

代表者:平口治 社長

創業:昭和39年

従業員:6人

※月刊石垣2014年11月号に掲載された記事です。

次の記事

株式会社東邦

大正9年の創業以来、石けんひと筋につくり続けてきた東邦。同社の看板商品である「ウタマロ石けん」が、発売から60年近くたった今も根強いニーズを保ち、堂々のロングセラー商…

前の記事

有限会社山本縫製工場

瀬戸大橋のたもとにある香川県坂出市で、主に婦人服の縫製を手掛けてきた山本縫製工場。同社が平成24年に発売した腹圧健康ベルト「アセット」がじわじわと売れ続け、今や同社の…

関連記事

株式会社マーナ

2022年に創業150周年を迎える生活雑貨メーカー・マーナ。長い歴史の中で数々のアイデアグッズを世に出し、ヒットに導いてきた同社で堂々の看板を張っているのが、15年に発売さ…

株式会社リンクライン

特例子会社として2010年に設立したリンクライン。当初よりせっけんの製造・販売を主事業とし、機械では表現できないフォトジェニックな商品づくりに取り組んできた。そんな同社…

石見空港ターミナルビル株式会社

1993年に開港した島根県の西の玄関口、萩・石見(いわみ)空港。その2年前に設立した石見空港ターミナルビルは、空港内施設の賃貸や管理が本業だが、とある理由から養蜂業に進出…