どの会社にも経営理念、企業理念があると思います。その理念は何に基づいてつくられたか、考えたことがおありでしょうか? 企業の理念はトップの育ち、常識、経験、絶対してほしくないことを基にしてつくられています。しかし、組織に集まってきた他人同士の社員は、育ちも常識もそれぞれ異なります。ですから、すんなり理解できない人の方が多いのです。
どの企業の理念も立派な文章で書かれていますが、毛沢東(毛主席)語録のように毎朝、唱和しても、言葉を覚えることと理解は別。読み親しむうちにいつかは身に付く、という発想では時間がかかりすぎます。オーナーがいくら口を酸っぱくして言っても、伝えようとしたことではなく、伝わったことが情報である以上、相手の心に届くように工夫するしかありません。
理念の理解を深めるために私がお勧めしている方法は、1項目ごとに、読む側が分かりやすいように事例や経験を加えて原稿用紙1枚くらいの文字数にまとめ、それをオーナー自らの言葉で説明するというもの。これが大事なのです。
指導先の出雲のパチンコ屋さんには二つの大きな理念があります。一つはオーナーである会長が細かく書かれた警句集。もう一つは監督官庁である警察庁の理念です。
あるとき、ネットでお客さまから質問があり、担当者が質問に答えたところ、その内容が射幸心を煽るとして、警察から注意を受けたそうです。会長はこういうことを無くすために徹底した理念教育をしてきたつもりだったのにその不足を知り、さらなる教育の必要性を痛感していました。
労働災害の経験則の一つに、「ハインリッヒの法則」というのがあります。工場で大事故が起きたとすると、その背景には29回の軽微な事故と、300回のヒヤリとするような事象がある、という統計に基づいた考え方です。1回の大事故を無くすには「あ、危ない!」という小さいミスをいかに少なくするか、日ごろの心構えにかかっている、というわけです。
業務上言ってはいけない、ということは全社員が同じレベルで知らないといけません。しかし、その理念が浸透していなかったことにより、先の事例では29回のうちの1回が起きてしまったわけで、これが重なると営業停止ですから大変なことです。
パチンコ屋さんに限らず、業務上のやってはいけないことは仕事の成績を上げる以前に全ての社員に分かってもらわないといけないことです。理解を徹底することは、日々の些細(ささい)な事故やトラブルを少なくする大きな手段であり、取り返しのつかない事故を回避する唯一の道でもあります。
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社名:株式会社 風土
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担当:髙橋
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