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「下町育ちの再建王」の経営指南 因果応報と運の巡り方

今から30年前の1983年、私が船井総研に入社する前の年に偶然手にした雑誌の中に、悠玄亭玉介さんという幇間のインタビュー記事がありました。幇間というのはお座敷遊びのときの俗に言う太鼓持ちのことで、人生の裏も表も知り、酸いも甘いも噛み分けた76歳のその名幇間は、こう語っていました。

「人に良くしてやったからと言って、人は返してなんかくれませんよ。でもね、たいした付き合いじゃない人がなぜか大きく助けてくれたりするのです。ですから、人生はトータルで考えると因果応報なのですよ」

当時の私はまだ経験も浅く、「そんなものだろうか……」といった印象でした。その言葉を身に染みて知ったのは、昨年、船井総研を退社した後のことです。退職後、「もともと、小山さん個人にお願いしていたのです」と、契約してくださった方もいれば、そうではない方もおりました。

また、お付き合いの無かった方から手紙をいただいたり、「実は隠れファンでした」と仕事を依頼してくださる方もおりました。結果的に退職した私と新たに契約を交わしていただいた方々は、旧知の方と新しい方が半々。激減することも想定していたので感激しつつ、かつて雑誌の記事中で見つけた「因果応報」の話を思い出したのでした。

話は飛びますが、東北復興ボランティアとして、無料コンサルティングをやらせていただいている企業の中の1社に、気仙沼のM製麺さんがあります。元の工場跡一帯は、がれきこそ残っていませんが、盛り土された道路が通っているだけで、未だまちらしい形態をなしてはいません。

同社は、一関市藤沢町の工場を譲り受けて改造。事業を再開し、ネット販売などにも挑戦しているものの、地域復興の遅れから売上が伸びずに足踏み状態でした。

ところがこの4月、新規取引の注文が入ってほっとしていたところに、東京の通販業者さんから大口の注文が舞い込みました。これで赤字に転落する心配もなく、次なる段階を迎えられます。

M製麺の社長と奥さんは気持ちの真っ直ぐな方で、この間、自社のみならず地域の復興に全力で取り組み、涙ぐましい努力を続けてこられました。資金繰りのピンチは1回や2回ではなかったと思います。

この経緯の一部始終を見てきて感じるのは、運の巡りの不思議です。諦めずに、同じ姿勢で頑張り続けていると、その努力は予想外の形で報われる。 「因果応報」、玉介さんの言葉がようやく理解できるようになりました。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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