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「下町育ちの再建王」の経営指南 自分の人生を制する――前始末の重要性

一流アスリートは練習や競技の前に長い時間をかけて入念にウォーミングアップをします。巨人軍の生え抜き最古参である鈴木尚広選手もその一人。鈴木選手は俊足と走塁技術の高さから「走塁のスペシャリスト」とたたえられ、近年は専ら試合終盤の代走の切り札として注目を浴びています。

彼は誰よりも早く球場入りします。そして、試合開始の7時間も前から念入りに体をほぐし、実働何分あるかわからない出番のために備えるそうです。ケガをせず、最高のパフォーマンスをするプロの仕事というのは、そうやって完成度を高めるものかと感動しました。

われわれビジネスマンも同じです。どれだけ仕事に対して事前に準備できるか、これが結果に結びつくのです。イトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊氏はこれを「前始末」と呼んでいます。良い表現なので、私もこの言葉を使っています。

「前始末」が万全であれば、次の案件に短時間で移ることができます。万が一、何か予想外のことが起きても、慌てずに対処できるでしょうし、打ち上げで飲みに行く余裕も生まれるでしょう。逆に、おろそかにしていると、一つのクレームに5倍の労力と10倍の嫌な気持ちが残ってしまうものなのです。

もちろん、仕事の準備としての前始末も大切ですが、それだけでなく、私はこれを日々の習慣とすることが最も重要だと考えています。どんなことかというと、普通の社員ならば、前日に仕事の予定の確認をしてシミュレーションしておく。そして朝、会社に早めに出社し、手帳を開いてどのようにお得意先を回るかとか、お客さまが少なくて手が空いたら何々をしようとか、ほんの15分でよいので、一日の仕事の流れをイメージするといったことです。これをやるのとやらないのでは全く違います。

確かに、思い通りにならないこともあるでしょう。上司に仕事を言いつけられたり、アポイントなしのお客さまが見えたり、やりたかったことが全然進まない場合もあります。しかし時間ギリギリに出社して、人と仕事に追われながら行き当たりばったりで一日を過ごすのとは、気持ちのゆとりも違います。何より、自分の一日を自分でコントロールしているという管理意識を持つことができるのです。

仕事は成果や効率、人時生産性を高めることが目的です。社員を指導なさるとき、一生懸命を結果に結びつける方法として、「前始末」の大切さを教えてあげてください。

時間の使い方を制する人が人生を制する。自分の人生を制したいと思うならば、前始末を習慣にしましょう。きっと人生が変わります。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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