私は師、舩井幸雄から多くのことを教えられました。その中に、「70歳代がいい人生になるように生きなさい」という言葉があります。それと同じことを、若いころ、兄のように慕っていた方から諭されたことがありました。
その方は、43年前、私が実家のディスカウントストアを継ぐにあたり、一番初めに紹介された宝石問屋の、伊藤文夫さんです。
伊藤さんは私よりも12歳年上でしたが、「スーパーB級グルメ」という会を、気の合うオーナーたちと開催していて、若い私をメンバーに加えてくれました。店の造作は気にせず最高品質の旨いものを食べるという趣旨の会です。仕事柄、何を見ても原価を読む癖がある私には、「スーパーB級グルメ」という発想が合っていました。
ボトルを入れると二人で10万~15万円する銀座の名だたるクラブも、関係者待遇で利用させてもらい、ゴルフにもいっぱい連れて行ってもらいました。
30歳を過ぎたころ、伊藤さんが、「数年で売上が10倍以上。経常利益もすごく上がっているらしいね。小山君はよく頑張っているし、優秀だ。自信満々だろう。でも勘違いをしちゃだめだよ。30歳代40歳代がいくら良くても、70歳代がみすぼらしかったら、人生を振り返ったとき、良い人生とは思えない。今は一生懸命修業することが大事。食事もゴルフも、銀座のクラブも、最高の物に触れることは、良い人生勉強。でもそれは70歳のときの君の人生をピカピカにするための作業で、楽しむための贅沢ではないんだよ」。
なぜ伊藤さんがそんな話をしたのかわかりません。私のどこかに慢心を感じたのかもしれません。
その後、事情があり私は家業を辞め、船井総研に入り、しばらくして恩師から冒頭の言葉をいただきます。伊藤さんと同じ内容であったことに驚き、片時も忘れることなく自らを戒め、休みも取らず仕事に打ち込んだ結果、退職時には、船井総研に一定の業績を残すことができました。
若い方にお伝えしたいのは、もし今、うまくいっていても、大成功していても、50歳から70歳までを見つめたうえで、石橋を叩いて生きていただきたい。また、今の人生が辛くても成功がおぼつかなくても、能力や筋肉をしっかりつけて経験を積むことで、70歳になったときに自分が納得できる人生になるんだ、と信じて努力を続けていただきたい、ということです。
私がゆとりをもって、このようなことをお伝えできるのは、二人の大切な恩人の教えのおかげにほかならない、今つくづくそう感じています。
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