北風のとき、北海道の新千歳空港へ向かう飛行機は太平洋側から高度を下げていきます。陸地を捉えて、まず目に付くのが紅白の煙突2本。王子製紙苫小牧工場です。さらに目を凝らすと、90基のタンク群とおびただしい数のソーラーパネルが眼下に広がります。タンクは原油の国家備蓄基地で、備蓄量は日本一。パネルは太陽光発電所。ほかに製油所があり、隣の厚真町には火力発電所。また、二酸化炭素(CO2)を地層に閉じ込める新技術CCSの実証実験も太平洋沿岸の海底で始まっており、苫小牧市とその周辺は日本のエネルギー拠点の一つといえるでしょう。
私どもの苫小牧民報は、そんな苫小牧市を中心に、北は新千歳空港、札幌市、東は馬産地・温泉地が広がる日高と襟裳岬、西は登別・室蘭までの太平洋岸を取材エリアとするローカル紙です。
創刊は昭和25年。以来、国内初の掘り込み式の港の誕生(38年)、札幌冬季五輪(47年)、元号の移行に立ち会い、熱狂した駒大苫小牧高校の夏の甲子園連覇は平成16、17年。その歴史のすべてを記録してきました。合言葉は「地域と共に、地域のために」。出発点は常にここにあります。
私は、17年に社長に就任し、現在は会長職に相当する議長を務めています。亡き父が初代社長だった縁はあったものの、マスコミ界は初めてでした。この「新聞素人」を強みとし、お客さまである読者の目線での経営を常に心掛けてきました。そして、生まれ育った大好きな苫小牧の魅力や潜在力を発掘し、紙面を通じて発信しています。
苫小牧は、寒冷・豪雪のイメージが強い北海道にあって雪は少なく、気温も氷点下2桁になる日は数えるほど。道内では温暖な気候ながら、「氷都」「アイスホッケーの街」と胸を張っております。市の貝であるホッキ貝の水揚げ日本一は意外と知られていない自慢の一つです。
また、1万ヘクタールの工業基地「苫東」は、重厚長大型の工業基地を目指した国家的プロジェクトです。その工業基地に最近、トマトやベビーリーフ、イチゴの生産工場が相次ぎ進出しました。夏にはソバの製粉工場もできます。これらの工場では、CCSで閉じ込めたCO2を活用しています。さらに車のテストコースでは、次世代の燃料電池車開発が始まろうとしています。
あすの技術が息づく苫小牧。タンク群、発電所、港湾、製油所などをつなぐ観光ルートは新しい時代をのぞくことができます。
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