日本商工会議所は7月18日、「2020年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を取りまとめ、関係各方面に提出した。同意見書では、付加価値創出による生産性向上に向けたIT・IoT・AI・ロボットなどの活用拡大や働き方改革への対応などの取り組みを支援するとともに、民間の発意や創意に基づく地域の自主的な取り組みを後押しすることで地域経済の好循環を目指すべきと主張している。日商の西村貞一中小企業委員長(大阪・副会頭)は同日、中小企業庁の前田泰宏長官に意見書を手交し、実現を強く求めた。(関連記事3面に)
同意見書では、中小企業の生産性向上には、同質的なコスト競争から付加価値の獲得競争への転換が欠かせないと指摘。中長期的な企業価値向上の観点に立った経営の持続性確保を目指して、付加価値の増大などに取り組む中小企業への支援策を求めている。
また、地方の中小企業は構造的な人手不足や賃上げなどの課題に直面しており、これらの克服には付加価値創出による生産性向上が不可避と強調。IT・IoTなどの活用拡大、働き方改革への対応、海外展開、取引関係の適正化が必要としている。特に最低賃金の大幅な引き上げや全国一律化は、経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)で引き上げの影響を受けやすい中小企業の経営を直撃し、雇用や事業の存続自体も危うくしかねず、地域経済の衰退に拍車を掛ける懸念があることに留意する必要があると述べている。
さらに、豊富なリソースを有する大企業は中小企業の取り組みに人材・技術などの提供を通じて協力するなど、大中小それぞれの企業が新たな付加価値の共創を目指して「共存共栄」関係を構築することが重要と指摘。大企業と中小企業がさまざまなコストアップを適切に負担し合ったり、大企業が中小企業のデジタル技術実装などに協力したりすることで、生産性向上の取り組みを後押ししやすい環境を整備することを求めている。
一方、地域では人口や中小企業数の減少、地方の疲弊と一極集中など構造的な地域課題への対応が待ったなしとなっている。このため、若者や大都市圏のOB人材などの地方へのUIJターンの促進や地元定着支援、域外需要を取り込む地域中核企業への支援などにより、地域にヒトと所得の流れを創出することで、地域経済の好循環をつくり出すことが必要としている。
最新号を紙面で読める!