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事例3 給食の提供のみならず〝食育〟で日本の食文化を伝える

ミールケア(長野県長野市)

ミールケアは、幼稚園や保育所、病院、福祉施設などへの給食受託サービスを全国約300カ所の事業所で展開している。同社は給食を提供するだけでなく、子どもたちに食文化を伝える〝食育〟も行っている。小さな弁当屋だった同社が、業務を拡大してきた背景には、日本の食事風景や文化と和食の成り立ちを次世代へ伝えたいという壮大な夢があった。

メニューは和食を基本に、伝統食や行事食も大切にしており、季節に合った食事を提供している

社員たちが使命感を持ってやり通せる仕事を

「自分の価値観を追い求めてやっているうちに、ああこの事業はニッチなんだと気が付いたほどです」とミールケア社長の関幸博さんは言う。

郵政省に勤務していた関さんが脱サラし、同社を創業したのは平成2年、長野市で開いた弁当店が始まりだった。弁当店にしたのは、関さんが料理をつくることが好きだったからだという。「脱サラした動機は不純で、社長になりたかっただけの話なんです。社長になって自分の好きなことをやり、それで事業が成り立つものはと考えたら、弁当店だったのです」

創業当時はまだバブル経済の最中で、事業は順調に発展し、3年後には2号店もオープンした。その後はオフィス向けの仕出し弁当も始め、12年には病院や老人ホームなどの医療福祉施設向けの給食サービスも行うようになっていった。これが給食受託サービスを手掛ける始まりだったが、関さんはやっていくうちに何か違うなと感じるようになっていった。

「事業を進めていくうちに、人様のお役に立てるようなことをやっていきたいと思うようになりました。それを深めていくためには、働く社員たちがきちっと使命感を持ってやり通す仕事でないと続けていけないだろうなと考えました。そこで気付いたのが、当時はまだ一般的ではなかった幼稚園への給食サービスでした。しかも、ただ食事を提供するだけでは面白くない。〝食育〟をキーワードにしようと思ったんです」

生産者を開示することで園児の保護者から信頼を得る

「食育というのは幅が広くて、みなさん食育という言葉は知っていても、具体的に何をするのか知らない人がほとんどで、これは極めていく価値があると思いました」と関さんは言う。そこで、食育に「日本の食文化」と「和食」の2つのキーワードを取り入れた。栄養面だけではなく、代々伝わってきた日本の味を子どもたちに伝えていく。日本古来の食事風景や食材の由来、食事の作法など、日本の食文化と和食を学んでいくことで、子どもたちがより健康的になっていってくれたらと考えたのだ。

そして20年から幼稚園・保育園向け給食サービスを始め、社員を幼稚園などに派遣し、園児向けに食育の出張授業を行っていった。「最初は保護者たちから理解されず、給食サービス業者は先生じゃないんだからなどと言われました」と関さんは言う。「しかし、幼稚園の先生方は真剣に取り組んでくれましたが、先生方は保育に忙しく、食育をやりたくても手が回らない。そこで私たちに、食育をぜひやってくださいと任せていただいたんです」

給食では、健康面を考えると食材は有機野菜が一番だが、コストが高いためそれにはこだわらず、野菜の生産者を開示してその考え方や生産方法を知らせることで園児の保護者たちの信頼を得ていった。その代わりにだしにはこだわり、動物性の素材を使わない植物性のだしを開発した。完成するまでに2年。その間「子どものアレルギーが緩和した」「風邪をひきにくくなった」といった声を園児の保護者たちから集め、相模女子大の教授の協力を得てデータを取っていった。この給食と食育という2つの柱が評判を呼び、8年後の現在は県内外約300カ所の施設に給食サービスを提供するにまで成長した。

「考食師」を創設し幅広い活動を展開

25年には、食育の先生となるための社内資格「考食師」を制定した。この制度は「子どもたちに日本の食文化を伝えるためには、まず教える側が正しい知識を身に付けるべき」という考えからつくられた。社内講座で食文化の歴史や栄養学、調理技術を学び、地元の農産物の生産実習などの研修を受け、最終試験に合格すると考食師として認定される。「最終試験で最も重要なのが伝える力です。子どもたちに食文化を教えていくので、伝える力がないと考食師は務まりませんから」(関さん)

ミールケアでは給食サービス事業以外に、昨年7月に長野市内でオープンした食育のテーマパーク「みーるんビレッジ」も運営している。広さ約7千坪の敷地には、レストランやカフェ、食品店の周囲に広い農場が広がっている。ここにはさまざまな種類の野菜が栽培され、食育の一環として子どもたちは農作業を体験することができるようになっている。こうした幅広い活動により、昨年6月、優れたサービス提供事業者を表彰する第1回「日本サービス大賞」(サービス産業生産性協議会主催)で経済産業大臣賞を受賞した。

ミールケアの将来の展望について、関さんはこのように語る。

「将来に向けた計画は3つあります。一つ目は元気な高齢者が集う場をつくる、二つ目は幼稚園への給食に関するコンサルティング、そして三つ目が働くママの応援団。子育てしながら働けるよう、食事と献立づくりでサポートしていきたい。また考食師については海外からオファーが来ており、日本の食文化と食育を世界に広げていけたらと考えています」

給食と食育という新たな需要の発掘を超え、ミールケアは日本の食文化を世界へと発信していく。

会社データ

社名:株式会社ミールケア

所在地:長野県長野市栗田8-1

電話:026-269-8800

HP:https://mealcare.jp/

代表者:関幸博 代表取締役

従業員:約1250人

※月刊石垣2017年2月号に掲載された記事です。

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